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百年の恋をも冷めさせてほしい【石動惣一】 ページ3

※タイトルはお題配布サイト「確かに恋だった」様より


 いい年の二周り以上も年齢が離れた男に恋をするだなんて。周りの人間達は口々に言う。じゃあ何歳だったらいいわけ?その度に、季実子は心の中でそう反論していた。どこからがいい年で、どこからが年が離れていないと言えるのか。それは人によるだろうし、環境にもよるだろう。現に、季実子のごく近くにいる友人達は季実子と惣一の年齢差に対しては何も言わない。勿論、最初は驚いていたようだが、彼女がかなりのおじ専だということを知ると途端に何も言わなくなるのだ。呆れているとも取れるが。とにかく季実子は、自身が変人と思われてしまっていることに大変遺憾だった。

「どうしたの?季実子ちゃん。そんな仏頂面して」

 惣一の声が思考に耽っていた季実子を現実へと呼び戻す。季実子はキョトンとした惣一の顔を見て無意識に二ヘラッと表情を緩めると「いえ……」と、小さく彼に答えた。飲んでいたコーヒーのカップをソーサーに置き、窓から通りを見遣る。今時珍しい、一席一席に設けられた目隠しの無い窓だ。たまに通りを歩く人と目が合い、その度に彼女はさっと視線を逸らす。ツインテールを解き、伊達眼鏡をかけているからか幸い未だ誰にも自身の正体はバレていない。

 今日は、惣一とランチデートに来ていた。しかも、いつもより少し遠出して隣町のカフェだ。最近人気だからと、惣一が偵察したいと言い出したのである。しかし偵察とは名ばかりで、二人は普通に昼食を取り、普通に食後のコーヒーを楽しんでいた。本当は流行りの店に行ってみたかっただけなのだろう。

「わたし達って、ちゃんとカップルに見えてるんでしょうか?」
「はは、それは無いな」
「ハッキリと即答しないでくださいよ……」
「だって、客観的に見てカップルじゃないと考えるのが自然だろ?まぁ、今日の季実子ちゃんは少しだけ大人っぽいから……。上司と部下、もしくは叔父と姪って感じかな」
「ハァ……。わたしがせめて三十代だったら……」
「俺がもう少し若ければ、とは考えないわけ?俺が三十代だったらって」
「惣一さんが三十代だったら、わたし惣一さんのこと好きになってません……」
「季実子ちゃんのおじ専は筋金入りだな……」

苦笑いを浮かべる惣一を見つめながら、季実子は両腕で頬杖をつく。

「何度も好きになっちゃいけないと思いましたし、この恋は報われてはいけないと自分に言い聞かせててきました」

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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時

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