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尚も首を傾げている季実子に惣一は腰を折り、耳元で呟く。
「あっちの要は桐生戦兎だ。その戦兎を騙しきれば、俺達も動きやすくなる」
戦兎なら季実子に疑いを持ったとしても、美空達が近しい惣一を無条件で信じたように、彼もまた多少は彼女に盲目になるだろう。そう考えたのだ。
「可愛い恋人を他の男にけしかけるなんて……。にしても、そんな簡単にいきますかね?」
「そりゃあ、すぐに心底信じてもらえるってことはないだろうな。でも、お前の得意分野だろう?外堀を埋めながら相手の懐に入っていくのは」
「嫌な言い方ですが……。まぁ、そうですね」
「戦兎や美空を味方に付ければ……。万丈はもうすぐ目の前ってわけだ」
惣一のその言葉に、季実子は僅かに目を見開いた。思いもよらぬ人物の名が最後に出てきたからだ。驚く彼女に、惣一は「どうした?」と首を傾げる。問われた季実子は「あの……」と、小さく言うと、沸いた疑問を彼にぶつけた。
「惣一さんの目的って、戦兎さんじゃなくて万丈さんなんですか?」
「……まぁ、どちらかというとそうだな。そりゃあ、どちらにせよ手段の一つと言えばそれまでだけど」
確かに万丈龍我は強い。しかし、強さに加え仮面ライダーに付属する様々な発明品を作りあげるほど頭のキレる戦兎より重要だというのならば、その理由は一体。季実子はさっぱり分からない惣一の思惑に、首を捻りっぱなしだった。考え、一人ウンウンと唸る彼女に、惣一から思わず笑みが洩れる。
「考えてもキリがないだろ」
確かに、それもそうだ。彼が今教える気が無いのなら仕方ない。彼女は諦めて顔を上げると。
「そうですね……。あ、そういえば知ってますか?惣一さん」
話を変えるべく、惣一にこう問うた。
「何が?」
「百合の花言葉。百合自体は確かに"純潔"なんですけど。黄色い百合は"偽り"だそうですよ」
「へぇ、純潔と偽り──。お前にぴったりじゃないか」
"偽り"。これから大勢の人間を騙さなければならない季実子にとって。その言葉は惣一の言う通り、彼女にぴったりだ。
それは季実子にとっての戦いが、今まさに水面下で始まった時であった。
──第四章へ続く
→三章まとめやオマケなど
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うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時