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その時、nascitaの入り口が開いた音がして、美空は慌ててカウンターから顔を出し、入ってきた主を確かめた。季実子も美空に倣って、カウンターから顔を出す。二人の視線の先には、険しい表情を浮かべる戦兎がいて。二人がいることに気がつくと、彼は目を見開き二人を見つめた。
「……おかえり」
「……ただいま」
美空の迎えの挨拶に、笑みを零し嬉しそうに答える戦兎。そして、そんな二人を首を傾げながら見つめる季実子と、万丈。だが、万丈はすぐに笑みを浮かべると、抱えていた梱包されている箱をカウンターに置き「どうよ、戦利品!」と、得意げにそれを軽く叩いた。パンドラボックス。季実子が中学生だったかそこらでテレビのニュースで見た代物だ。まさか本物を間近で見る時が来るとは。季実子は珍しそうにそれをまじまじと見つめた。
「パンドラボックスじゃん!」
「取ってきてやったぜ」
和気藹々。その表現がピッタリな三人の様子を輪の外から眺めつつ。季実子はここにやって来た理由を思い出し、桐生戦兎を注視しはじめる。
「あ、ねぇ!季実子が無事に帰ってきた二人の為にお寿司奢るって!」
「まじかよ!お前やるなぁ」
「やったぁ、今夜はご馳走だぁ!フゥー!」
前に一度見たことがある喜び方だが、嬉しいのに間違いは無いようだ。美空の言葉に笑顔で頷き、四人で地下基地へと入る。そして一同は、寿司だのピザだの各々好きな出前を取り、宴会の準備を始めた。支払いの時にレジのお金と、自身の財布の中身がゴッソリ無くなってしまったのは見なかったことにした。
「今日は泊まっていきなよ季実子」
「えっ、でも、わたしが泊まれるスペースあります……?」
「わたしのベッドなら二人寝れるし、ね」
「俺と戦兎は多分このまま炬燵で寝るし、マスターはいつも通り、二階の物置部屋で寝るだろ」
そういえば、二階にも一応生活スペースはあると聞いたような気がする。殆ど物置と化しているそうだが。彼らが大丈夫と言うのなら大丈夫なのだろう。
「ふふ、わたしは惣一さんと一緒でもいいんですよ。美空ちゃんのベッド半分使うのは悪いですし」
「だめだめだめだめ!絶対駄目!俺が許しません」
「なんで戦兎が怒るのよ」
「っていうか、半分冗談なんですけど……」
「もう半分はなんなんだよ」
万丈の冷静なツッコミは無視しつつ、飲み物や皿を炬燵に並べていく。いそいそと戦兎と龍我が炬燵に入り、美空も戦兎の向かいに座った。準備万端だ。
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うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時