・ ページ29
「はぁ……。なんか、心配してたのが馬鹿らしくなってきた」
「心配?」
美空は、その表情に少し陰りを見せると、小さく頷く。
「戦兎と万丈、パンドラボックスを奪いに行ってるの。でも……。多分、ブラッドスタークの罠」
「ブラッドスタークの?」
ハッと目を見開き、ブラッドスタークの名に食いつく季実子に、美空は首を傾げる。しかし、季実子は勘繰られないようにと何事もなかったかのように表情を戻すと、美空の言葉を待った。
「ブラッドスタークが戦兎達を誘き寄せる為の明らかな罠なんだけど……。戦兎ってば、その罠にハマりに行くんだって。わたしに最後のフルボトル浄化を頼んできて……。戦兎達、無事に帰ってくるよね……?」
「えぇ、勿論……」
桐生戦兎が無事に帰ってくるかどうか、罠かどうか。そんなことはどうでもよかった。季実子は、今の美空の言葉で気づいたのだ。戦兎がブラッドスタークの正体を知っていることに。知っているから罠にハマりに行ったのだとしたら。知っているから彼女にフルボトルの最後の浄化を頼んだのだとしたら。季実子は、その確信を得る為に仕掛けた。
「でも、惣一さんも心配してたでしょうね。戦兎さん達が敵の陣地に乗り込むわ、美空ちゃんに急にボトルの浄化をさせるわ……」
「ううん、お父さんは知らないの。昨夜はバイト先に泊まったらしくて今日もまだ帰って来てないし。だから、もし戦兎達がパンドラボックスを持って帰ってきたら……。お父さん驚いて倒れちゃうかも」
「そっか」
そう返すのが精一杯だった。
「そっかぁ……」
声が震えるのを抑えきれず、季実子は密かに自身の太腿を抓る。美空のように、何も知らないままでいたかったが。それではいけないのだ。それでは、彼と共に居ることはできない。無理矢理笑顔を作り。季実子は美空の肩を掴む。
「戦兎さん達が帰ってきた時の為に、お寿司取ろっか!わたし、お金出すから」
財布を美空に見せ、彼女の顔の前で振る。すると、固かった美空の表情が、フッと吹き出した笑みと共に柔らかくなった。
「もうっ」
「あ、足りないかもしれないから紗羽さんにも寄付を募ろうね」
「いいよ、レジのお金使うから」
「えっ……。お店にお金、あるの……?どこから収入を得てるの……?」
冷蔵庫を開け、先に地下基地へと入っていく季実子。美空もその小さな戸をくぐろうと身をかがめると。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時