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誰かに心臓を鷲掴みにされているような気さえする。その誰か、というのはもしかしたら季実子のことなのかもしれない。元より堕とすつもりだったのは間違いないのだが、あれは殆ど衝動的だった。口づけなど、あちらが望むまでしようとなど思っていなかったのだ。もっとじわりじわりと蛇が獲物を殺すかのように攻めるつもりだったというのに。スタークは仮面の下で苦虫を噛み潰した。自身を突き飛ばした瞬間の彼女の表情が脳裏に張り付いて離れない。彼女は自身に相当惚れ込んでいた筈なのに。揺れる瞳、震える唇、縮こまらせた小さな肩。染まった頬も、恥じらいなんて可愛いものでは無かった。人生で最大の失敗でもしてしまったかのようだった。
「なんでこの俺があの女にあんな顔されなきゃならないんだか」
小枝を勢い良く踏み折る。バキバキと音を立てるそいつを踏み躙っていると、遠い木陰にスタークを呼びつけた男が立っていた。
「お前から誘ってくるなんて珍しいなぁ」
男──氷室幻徳は。語りかけるスタークから背を向けたま口を開く。
「パンドラボックスをどこに隠した?」
チラリと見えた目には何やら怒りが篭っている。無理もない、その怒りはスタークのせいで湧き上がっているのだから。スタークはフと笑うと、彼の質問に質問で返した。
「いきなり本題か?」
「いいから答えろ!!」
怒気が益々膨れ上がる。彼がここまで短気で向こう見ずでなければ、もう少し駒として良い立場で使ってやってもいいと思っていたスタークだったが。今にも殴りかかってきそうな様子を見ると、それは無理そうだ。スタークは可笑しそうに笑い。
「俺に忠誠を誓えば、教えてやるよ」
という冗談を答えにした。彼が真面目に答えるとは幻徳も最初から思っていなかったらしい。自嘲的に鼻で笑うと、奴はトランスチームガンを取り出し、フルボトルを装填する。
「お前とはもっと早くケリをつけるべきだった」
そして、そのフルボトルをトランスチームガンに装填すると。
「蒸血」
トリガーを引き、氷室幻徳は禍々しい霧に包まれた。見慣れた変身シーンである。霧が晴れると──黒い装甲が光るナイトローグ様のお出ましだ。どれほど力の差を見せつけてやっても分からないらしい。スタークは仕方なげに武器を持ち直すと、ナイトローグを煽るように首を傾げた。
「俺と戦って勝てると思うのか?」
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うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時