stage.9【そよ風の口づけ】 ページ1
「これ、次のセットリストだそうですよ、季実子さん」
すべてのレッスンが終わった夕刻。更衣室に居た季実子は愛花に紙を渡され、それを受け取った。最近愛花がすっかり成長したようで、このセットリストも殆ど愛花の案が採用されたものだとか。彼女の成長に半分嬉しさと半分寂しさを胸に秘めながら、季実子はそこに書かれた文に目を通した。
「えーと、オープニングはわたしがセンターの"あなたに夢中"で……。MCが入って、ジェイミーセンターのオリジナル曲"イルミネーションが消えない内に"」
全二十曲中キャンディーズの曲は十曲、いつもより多めだ。MC用マイクがあまり使えない関係で、今回はMCの回数を少なめに取っているらしい。だからだれないように、オリジナルの曲とキャンディーズの曲をほぼ交互に歌うようにしているようだ。時間が無かったからか新曲も少ないらしいし、これ位がちょうどいいだろう。
「オッケー把握。それで、今日はもう何も無いの?何も無いんだったら、わたし用事があるから帰るからね」
「はい、大丈夫ですよ」
その言葉に頷き、彼女は帰り支度を始める。そんな季実子の背中を愛花はじっと見据えた。愛花のその態度を不思議に感じ、思わず振り返れば。彼女は眉根を顰めて俯く。
「愛花……。どうしたの?」
「季実子さん……。季実子さん!」
突然のことで何が何やら季実子には分からなかったが、愛花が抱きついてきたらしい。追突するような抱き着き方だったので、季実子はバランスを崩すと、そのまま設けられていたベンチに座り込んだ。
「ちょっ……ちょっと、どうしたってのよ愛花!取り敢えず、取り敢えず離れて!そして隣に座って!」
季実子に促されるまま、愛花は季実子の隣に腰を下ろす。どうやら少し泣いているらしい。オロオロと鞄からハンカチを取り出すと、それを季実子は愛花に渡した。いつもおちゃらけまくっている彼女だが、一体どうしたと言うのだろうか。早く惣一に会いたい気持ちを抑えつつ、俯く彼女の顔を覗き込む。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時