第60話 ページ10
怪我をした兵士は兵団の附属病棟に運ばれる。
見える怪我こそしていないAも、自分では自由に動けないのでそちらに入れられた。
入院して翌日。
「悪いわねぇ、わはは」
「まったくですよ」
眉をひそめたモブリットにAは笑いながら彼の持つ書類を受け取った。
「入院中くらいジッとしてればいいのに」
「そうもいかないでしょ。今回久しぶりの調査だったからね。改善点が多すぎて覚えてるうちに書いておかなきゃ」
「ほんと、機械関係に関してはマメですね。他の報告書は一切やらないのに…」
グチグチ言いつつもベッドの横に椅子を持ってきて座ったモブリットは、リンゴを剥いてくれた。
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モブリットも帰って、1人で書き物をしていると、ノックの音がした。
返事をするとそこにはリヴァイがいた。
座ったままの状態で敬礼する。
「なんだ。体が動かねえと聞いていたが」
「さ、幸いにも1日寝たら大分ましになりました」
「そうか」
そういったリヴァイは隣に立つ。
手にはフルーツが入った籠があり、それを枕元に置く。
高級品に、お礼を言ったが特に返事はない。
そのまま何も言わず隣の椅子に腕と足を組んで座った。
そして話をするでもなくこちらを睨みつけている。
「あの。まだ怒ってますか?」
「なにがだ」
「…いえ」
「リチャードが来るらしい。そろそろ到着する頃だ。それを伝えるように言われてきた」
「あ〜…ははは」
Aは少し困った様に笑う。
リヴァイが何か言いかけた時、看護婦が部屋に入ってきて、リチャードが来たことを告げられた。
それを聞くとリヴァイは立ち上がる。
「おい」
「は、はい」
「エルヴィンの為だとか兵団の為だとか、そんなことで色々決めるなよ。…エルヴィンからの伝言だ」
「え?」
リヴァイは横目でAを見る。
「お前の人生はお前だけのものだろ。誰かの為、何かの為に犠牲にしていいものじゃないはずだ。勿論リチャードもな」
「…」
返事をしないAに何を言うでもなくリヴァイは部屋を出て行った。
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作者名:ララ | 作成日時:2020年11月25日 0時