第59話 ページ9
全身に伝わる振動で目を覚ましたA。
自分の顔を触って生きていることを確認する。
「…なんとまぁ。生きてる」
「そりゃあ生きてるよ!」
予想もしていない声に驚いて起き上がると、全身が痛い。
「いっっっったぁぁぁぁぁ!!!」
思わず大声で叫んでその場に転がってのたうち回る。
転がるとその人物は心配そうに笑って、「大丈夫?」と尋ねた。
そこにはハンジが座っていた。
「ハンジ…。ハンジが助けてくれたの?」
「まあね。でも大きく分ければ私も助けられた側。エルヴィンが巨人に気付いて他の隊を向けてくれて助かったよ。私も怪我しちゃってたからさ」
そう言って包帯を巻かれた腕を見せてきた。
「Aは全身打撲したみたいだから、目に見えた怪我はないだろうけど痛むと思うよ」
「うん、まさに痛感してマス…背中から落ちたからなぁ。現役時代ならこんなことなかったのに」
仰向けのまま真っ赤に染まる空を見上げた。
「いやいやA、腕は衰えてないね。びっくりしたよ。あなたが逃げずに戦ってくれたお陰で助かった命が沢山あった」
「でも、何人かは死んじゃったのよね」
「…。それは、壁外調査のたびに起きる事だよ」
「私が代わりに死んでも良かったのに」
小さくそういったAにハンジは眉をひそめた。
「そういう事、言うもんじゃないってことは分かってるんだよね?生きたかった兵士がたくさんいたんだよ?」
「…。ごめん。無神経なこと言った」
「ううん。わからなくもないけどね。こんなことばっかりしてたらさ。でも、口にしちゃダメなんだよ。私たちは」
「厳しいなぁ」
「まーね」
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作者名:ララ | 作成日時:2020年11月25日 0時