第62話 ページ12
リチャードが帰った後、Aは部屋に置いてある車いすに乗って、病院の廊下の突き当りにある窓辺から外を見た。
リチャードの後ろ姿が見える。
「話はすんだみてぇだな」
その声に振り向くとリヴァイがいた。
「…。まさか聞いてたんですか？」
リヴァイは黙って肯定した。
「ホント、酷い女ですよね。自分がエルヴィンにされて辛かったことをリチャードにしていたんですから」
一呼吸おいてリヴァイを見る。
「…エルヴィンの伝言なんて嘘ですよね。エルヴィンがそんな甘い事言うわけがありませんもの」
口の端を少し上げて笑いかけたAに、リヴァイは相変わらず無言で窓の外を見た。
ちょうどリチャードが病院の門を出て行った。
「兵長って不思議。話し方は突き放すようなのに、本当は思いやりを感じる所が。エルヴィンと真逆」
「それは褒めてるつもりか？」
「勿論です！だから色んな誤解が解けたら、沢山の人に慕われていくと思います」
「くだらねぇ他人の分析ばっかりしてんじゃねぇよ」
舌打ちをしながらAにカーディガンをかけたリヴァイは、病室に戻るように促して車椅子を押した。
部屋に戻りながらリヴァイは言う。
「お前と資料室で話すまでは誰も俺に話しかけて来やしなかった」
「あの日ですか？」
「ああ。思えばあの日をきっかけに、話しかけてくる連中が増えた」
「それは兵長が元々持っていた魅力ですよ。周りに気づかせるきっかけがなかっただけです。今なら私も分かります」
「お前はいい奴だな」
「…エルヴィンは、時間が経てばお前を受け入れるだろうな」
突然そんなことを言い出したリヴァイを振り返って見上げたが、彼はまっすぐ前を見ていて視線は合わない。
「男の勘だ。あいつは何かに踏ん切りをつけたんだと思う」
「………。あ！あの、壁外調査の前日は申し訳ありませんでした」
「あ？ああ。気にしてねぇ。むしろお前のあんな敵意むき出しの顔を見られてよかった」
「そ、そう言っていただけるとまだ救われます」
「ただ、壁外に出ればいつ死ぬか知れねえってのに、あのままだったことに関しては俺も反省している」
意外な言葉にAは驚いた。
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作者名：ララ | 作成日時：2020年11月25日 0時
