片想い ６３ ページ13
.
その週の土曜日。
「A来るかなー？」
スバルが、体操服に着替えながら俺たちに尋ねる。
今日の俺たちの担当はAだけど、最近来てないから来れるかどうかは分からない。
北斗が昨夜連絡は入れたらしいが、既読がついただけで返信はなかったようだ。
「このまま、学院自体を辞めちゃったりしないよね……？」
真が不安そうに言うと、噛み付くように「そんなわけないじゃん！」とスバルが言う。
でも、今のAなら、その可能性がないとは言いきれない。
(俺たちが信じないといけないんだろうけど、不安だな……)
「不安そうな顔してるねぇ」
「あぁ。だってお前が……え！？」
後ろから声が聞こえて、慌てて振り向けば、そこには笑顔のAが立っていた。
疲れで幻覚見えてんのかなー、と思い何回も目をこすってみても、その幻覚は消えない。
「あ、Aだー！！来てくれたー！！」
俺の声を聞いてこちらに来た他のやつらは、Aの姿を見ると嬉しそうに近付いた。
スバルに関しては、物凄い勢いで抱きついていたから、Aが転けそうになっていたけど。
「長い間休んでごめんなさい！ここに来る前に、他のユニットの皆にも謝ってきたから遅れちゃった」
「全然！Aちゃんを久しぶり見たから、僕ちょっと泣きそう〜」
「……もう大丈夫なのか？」
北斗がそう尋ねると、Aは一時の間無言になり、少し経って口を開いた。
「今日……あの人たちとのケリをつけてくる」
「ケリ？」
「うん。休んでた間、ずっと考えてたの。私は今後音楽とどう向き合っていくか」
そう言ったAの目には、迷いや不安など、もう何処にもなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水神友花 | 作成日時：2018年10月17日 22時
