【花宮真が誘拐されました。】

誘拐：8 ページ9

食器を片付けるためだろうか、Aは立ち上がったとこらで「あ」とこえを漏らした。


『そういえば、まだ言ってなかったわね。
あんたの学校のこと』


俺は俺で、「ああ……」と呟いた。頭に浮かんでいたことではあるが、どうせ今は夏休みだ。
まだ始業には時間もある。


『長期の旅行届けを出しといたわ。だからしばらく学校には怪しまれないわね。
部活は、……あんたを慕うチームメイトが探してくれるかしらね？もっとも、できることなんて限られてるでしょうけど。』

「ふん。そうかよ。」


素っ気ない返事をしてみせたが、これはしめた。アイツらは普通の男子高校生じゃない。
腕っぷしの強さやハッキングはもとより、特に古橋のストーカー技術においては気持ち悪いくらい……いや、気持ち悪い。

本業を凌ぐかもしれねぇ。本業ってのがいるかは知らねぇけど。

とにかく、いつも気がついたら盗聴器や盗撮カメラなどは外していたが、もしかしたら１つくらい残っているかもしれない。


『期待してるところ悪いけど、盗聴器やらは外しておいたわよ。粉々にしてね。
……ったく、あの古橋って男、同性にあんなにストーカーして、頭イカれてんじゃないかしら。』


それについては否定することは無い。

しかしやっぱり気付かれていたみてぇだ。誰が仕掛けてるのかも知っている。……俺を殺すためだか何だ知らねぇが、コイツだって相当イカれてる。


「ご苦労なこった」


『……別に。

風呂、沸かしてあるから早く入ってよ。』


Aがふと近づき、手に触れた様な感触がした。

手首に目を落とすと、手錠が外れ、床に音を立てて落ちた。




――――――カシャン

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