【花宮真が誘拐されました。】

誘拐：13 ページ15

風呂場とクローゼットを調べ終わり、何も手がかりはないことを確認した。

どちらにも窓はないし、風呂場の換気扇は釘でしっかり打ち付けられていてドライバーがないとやはり開けられなそうだ。

強いていえば、たくさんの適当な服が掛けられたクローゼットの奥、にフリッフリのレースがついたピンクのドレスが置いてあるのを見つけた。サイズ的にいえば俺でも入るくらいで、ちょうどそれに見合うピンクのヒールと靴下も揃えられてた。紛れもなくAの嫌がらせだ。


あの女への殺意も確認した。

マジでぶっ殺す。






順番的に言えば、次は本棚。


だが、


「正直終わる気しねぇ、よな……」


東西にそびえ立つ本棚にびっしり本が埋まっているのだ。
１つ１つ調べていたら日が暮れちまう。


先に、机の方から調べるか。





机なんか調べても何も見つかることはない？

それはとんだ落とし穴だ。


机ってのは案外視覚がある。

机の上は綺麗に拭いたとしても、机の裏や脚を綺麗に拭くやつなんて滅多にいない。

こういう風に閉じ込められた、脱出ゲームみたいな状況に陥った時にはあらゆる角度から物事を観察して考察することが必要だ。



例えば、
























俺の前に「誰か」がこの部屋に閉じこめられたことがあったとしたら？

















その可能性も考えてみる価値がある。



窓の格子は随分前に付けられたようだし、この部屋はホテルのような感じはしないのに設備が揃いすぎている。
本棚の本も、窓寄りの方は日差しのせいで黄色くなっているものがあることは眺めただけでわかる。
Aの手際の良さも違和感を感じる。

だから誰かが閉じ込められていたわけではないにしろ、この部屋にいたという結論に辿り着くことは容易だろう。



そしてそいつが、ここから出られる、もしくは絶対に出られないと悟った時。
また誰かが閉じ込められる事を予期して脱出のヒントを遺すということも、考えられる訳だ。



そんでさっきも言ったとおり、机を調べるために裏返してみると。


「ふはっ……やっぱりな、」


脚の一つに一周する切れ目。目を凝らさないとよく見えないくらいの細さで引かれている。

回してみると、案の定中は空洞。

今度は机を縦にする。と、丸まった紙が滑り降りてきた。

少し湿っぽいそれを開くと。

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