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「A、どうしたの?」
Aは俯いたまま、何も発しない。
「…急に京都校に帰るなんて言い出したの、なんで?」
『……。』
「A。」
Aに何か答えて欲しい。
どうしてこんな行動をしたのか。
返事を急かしたい気持ちを押し殺しながら、Aの名前を呼んだ。
Aのすぅっと息を吸う音が聞こえて、やがてふぅーっと大きく長く息を吐いた。
彼女の吐いた息は、冷たいであろう彼女の身体から出たものとは思えないくらい、暖かいのだろう。吐いた息が外気に触れて白く濁っているのが見えた。
そして僕に向かって小さく微笑んだ。
それは今まで見たこともないくらい哀しい、弱々しい、寂しい、儚い、そんな笑顔だった。
そのまま彼女の存在がだんだん透明になって消えてしまいそうだと思った。
Aは座っていたベンチからゆらりと立ち上がった。
僕とAの距離は1mかそこいらくらいしか空いていない。
でもどうしてこんなに距離があるように感じるのか。
彼女の纏う空気感がいつもと違って、それ以上距離を詰めることもできない。
『五条先生』
「…うん」
『《恋愛ごっこ》はもう終わりにしませんか?』
Aのその言葉に僕の心臓は、一瞬ドキリと跳ねた。
《恋愛ごっこ》
それは多分僕の言葉だ。
硝子が帰ってきた日、Aをどう思ってるかを聞かれて、咄嗟に出た言葉だった。
もちろん本心じゃない。
でも腐っても教師な僕が、一生徒に淡い感情を抱きかけているなんて、例え硝子にも気取られたくなかった。
自分で言うのもなんだけど、そういうのキャラじゃないし。
でもとりあえずAのことを目の届くところに留めておきたかった。
──今はそれでいいと思っていた。
…聞かれていたのか、あの日の会話を。
よりにもよって、1番聞かれたくなかった相手に。
違うんだ、誤解なんだ、本心じゃない、どんな言葉も今の状況じゃ全て嘘っぽい。
いつも馬鹿みたいに回る頭は、必死で今の状況を打開する言葉を探すが全然出てこなかった。
何を言えない僕を困ったような顔で見るA。
すると、Aの顔が何かの覚悟を決めたような表情に変わった。
その雰囲気に思わず僕が息を呑む。
『五条先生、
私は、五条先生が好きです』
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夢花(プロフ) - ユリ.さん» ふふふwwwそうなんですかwwwこれぞ小説のちか(((殴 メタメタァ (2021年5月7日 9時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 夢花さん» マジで息できないですよね。(笑)終わった後息も絶え絶えになりますもんね!夢主ちゃんも呼吸困難になったと思いますが、ここで死なせてもアレなのでちゃんと息できたことにしてます。(笑) (2021年5月7日 7時) (レス) id: c519aef02a (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 普通にこしょこしょは死人でますよ?だって息できないもん{笑ってるから}(・_・) (2021年5月6日 16時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 陽菜月さん» 口から心臓はやばい!(笑)しまってしまって〜(笑)もう少し待っててくだされな!まだ本調子になれず…(;_;) (2021年4月16日 6時) (レス) id: 5035154a58 (このIDを非表示/違反報告)
陽菜月 - もう、続きをワックワック胸を踊らせながら待ってます!!(ワックワック!んあ!?ワクワクしすぎて口から心臓が!?グロイ!) (2021年4月15日 22時) (レス) id: 6820255b8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユリ. | 作成日時:2021年4月2日 20時