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伊佐敷「杉本」
「はーい」
部室で野球部日記をつけていると、純さんが汗を拭きながら入ってきて、私に「話あんだが…」と言いづらそうに言う。
「なんですか?改まっ……まさか純さんまで…」
伊佐敷「…なんだよ」
「『実は俺…ずっと前から哲が好きなんだ』とか言うんじゃ…」
伊佐敷「言わねーよ!!何バカなこと言ってんだ殴るぞ!」
「も、もう殴ってる…!」
純さんに頭をぐりぐりされながら悶えていると、ため息つきながらパッと離してくれた。
痛くて涙目で純さんを見上げれば、「実はな」と私の目線に合わせてしゃがんで言う。
伊佐敷「監督が……」
「か、監督が?」
伊佐敷「………クッ…やっぱいえねぇ!」
「え、なんですかそれ!そこまで言っといて!?」
伊佐敷「俺は…お前の悲しむ顔なんて見たくねぇ…!」
「………悲しい話題なんですか」
辛そうな顔で私から目をそらす純さんに、私はごくりと唾を飲みながら言うと、「いいか、落ち着いて聞けよ」と私の肩を持って真面目な顔で言う。
伊佐敷「実は妻子持ちらしいぞ」
「………え」
伊佐敷「美人な奥さんと2人の娘に囲まれて…」
「………嘘だ」
伊佐敷「ちょ、え?杉本?」
まさかの大カミングアウトに、ふらっとして体の力が抜ける。純さんはぎょっとしながら私の肩を掴んで支える。
片岡監督が、妻子持ち。
ありえないことはない。歳も歳だもん。幼い娘に囲まれる監督は、正直萌える。でも……
「監督が……他人のものだなんて……」
「おい!しっかりしろコラ!!」
「純さんさようなら、今までお世話になりました」
気力のない声で言い放つと、荷物を鞄に突っ込んでとぼとぼと歩き出す。純さんはそんな私を見て慌てて止める。
伊佐敷「どこ行く気だお前!」
「……実家に…帰ります…」
伊佐敷「いや!お前実家に住んでんだろ!っつーかしっかりしろ!嘘だから!!」
「………嘘?」
伊佐敷「………いや、だから………ドッキリっつーか…」
「……………」
言いづらそうに言う純さんを数秒真顔で見つめると半泣きでつかみかかった。
☆
☆
言っていいことと悪いことがある
☆
「ひどい!最低!言っていいことと悪いことがありますからねぇ!!」
伊佐敷「ってぇな!これは言っていいだろ!」
「よくない!!もう私に残された道は略奪婚しかないかと思いましたよ!!」
伊佐敷「お前に残された道なんかねぇよ!!」
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