苦悩 ページ3
保健室に着くと、
グズグズに泣きわめいたであろう顔の
灰羽が椅子に座っていた。
「灰羽くんじゃん、」
灰羽「Aさん、赤葦さん…」
Aの声に反応して顔を上げた。
いつもの元気はどこに行ったのだろう。
赤葦「どうしたの、こんな所で。
また夜久さんに怒られた??」
そう言って灰羽の隣にそっと座ると、
灰羽は、こくり、と頷いた。
灰羽「俺、レシーブ下手で…上手くならないと怒られるのは分かってるんですけど、ブロックの練習したいし…」
赤葦「灰羽はブロックの方が好きなんだ?」
灰羽「アタック止めるのってかっこいいし、黒尾さんとかもブロックで活躍してるから…」
赤葦「得意なことを伸ばす方が難しい、って知ってた?」
「うちのエースの話だね、笑」
Aは救急箱を取り出し、俺の手当てを始めた。
赤葦「うん、うちの木兎さん、クロスが得意でさ。
ストレート苦手だからずっとクロスで打ってて。
そしたら相手チームにドシャット食らってさ。
しかも公式試合で。それが悔しかったみたいで、
その日から猛練習。そしたら打てるようになって、
翌年同じチーム相手にストレート打ち抜いたんだよ。」
ちらり、と灰羽を見ると、目が輝いた。
灰羽「木兎さん凄いっすね!!
俺も頑張ってレシーブ練習しようかな…
でも、今戻っても夜久さんに怒られるだけだし…」
「衛輔くんは怒るためにリエーフくんにレシーブ練させてる訳じゃないよ、」
俺に冷えピタを貼って、救急箱をしまいながら
灰羽にはっきりと言った。
灰羽「でも毎回怒るし…」
「期待してるから、もっとできるから怒ってるの。
もっと上手くなれ、って。
3年生はもう引退まで時間ないから。」
灰羽は、はっとした顔で見つめてくる。
俺は、何も言わずに頷いた。
そして灰羽はいきなり立ち上がった。
灰羽「俺、レシーブ練頑張ります!!
あの、ありがとうございました!!」
そう言って灰羽は飛び出して行った。
「…私がそうだったから。」
赤葦「レシーブ下手なの?」
「そっちじゃなくて、怒る意味の話。
私もあれくらいで気づけてたらよかったんだけど。
気づけなかったから。」
赤葦「1人気づかせられたならいいんじゃない?」
「そっか、それもそうだね。」
赤葦「…てか、冷えピタ貼るほどひどい?」
「変なアザになるよりはマシかと思って…
少し腫れてるし。」
赤葦「まじか、怖っ。」
女子も本気で殴るとここまでなのか、と痛感した。
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作者名:まなか | 作者ホームページ:http://mana_no_syo_settu
作成日時:2019年4月20日 0時