183.神の褒め言葉 ページ15
どこか落ちていく感覚があった。
目は閉じているか開いているのかも分からない。
『黎斗さん、、』
Aが自分を呼ぶ声がする。声のした方を向けば、白衣を羽織ったAが手を振っていた。
不思議と頭痛は無くなっていた。
落ちていくなかで、Aの顔や声が走馬灯の様に流れて行く。その一つ一つが黎斗の胸の中に飛び込んで来る。
Aと初めて出会った幻夢コーポレーションの廊下からCRでの日々が全て再生される。
そして、ついに意識の底まで落ちた。
『A、、、君を取り戻したよ、、、』
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「君の事はほぼ思い出したんだが、他の事はまだ記憶が断片的だ」
「思い出してもらえて良かったです」
「寂しかったかい?」
「当たり前です!」
膨れっ面のAを黎斗は優しく笑ってそっと抱き寄せる。視線は窓の外のみなとみらいの夜景を眺める。
「記憶のデータが無くなっても、また君の事を好きになるんだな」
「私もそうでした」
「Aは私にとって何よりも危険なバグスターウイルスに違いない。一度感染すると死ぬまで治らない」
「もーっ!もっと素敵な例え無かったんですか?! 」
「ゲームマスターの私からの最高の褒め言葉なんだが」
黎斗の手がそっと頬に添えられ、唇が重なる。
寂しくて泣きだしそうだったAの気持ちは、胸の奥で熱い想いに変わる。
背伸びをして長身の黎斗の首に腕を絡め、自分からもっと彼を求めていた。
唇からお互いの熱い気持ちが伝わり合って、甘い音を立てる。
「愛しているよ、A」
黎斗の唇が耳に触れて愛を囁く。それだけでたまらないほど感じてしまう。
広いベッドで重なり合い、綺麗に整えられていたシーツは乱れて行く。
「黎斗さん、大好きです」
「ああ、私もだ」
肌の触れ合う感触がたまらない。黎斗の唇もシーツの擦れる音も全てがAを甘く溶かして行く。
黎斗に溺れて行く意識の中で、一瞬、グラファイト
の顔が浮かんだ。
『私の為に黎斗さんに言ってくれたのね、、、ごめんね、グラファイト、、、』
黎斗に愛されながら、グラファイトの瞳を思い出し、切ない想いがAの胸に混じる。
でもそれも、肌に触れる黎斗の唇で全て甘い痺れに変えられて行く。
「可愛いよ、A」
みなとみらいのキラキラした夜景をぼんやりとした気持ちで黎斗の腕の中から眺め、幸せという名の眠りに落ちた。
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大崎舞子(プロフ) - こはるさん» 初めまして!グラファイトのかっこよさを知っている方に読んで頂けて嬉しいです!いいですよね、グラファイト!トキメイテいただけて光栄です! (2018年7月4日 19時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
こはる - はじめまして、大崎さんのグラファイト作品を全て読ませていただきました!最近エグゼイド を全話見てグラファイトのかっこよさにノックアウトされた者です。大崎さんの書くグラファイトが素敵すぎて時間を忘れて読まさせていただきました。もうトキメキました。 (2018年7月4日 9時) (レス) id: dfc6dee562 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - 大崎舞子さん» 返信まで有難うございます。また、短編や新作も楽しみにしております。 (2018年2月5日 20時) (レス) id: 6877703fa1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - しゃけさん» こんばんは!読んで頂いてありがとうございます!とても嬉しいコメントです!!趣味で始めたものを素敵と言っていただいて感激です。またよろしくお願いいたします! (2018年2月5日 19時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - こんばんは。全て読ませていただきました。とても好きな話調で、続きをどんどん見たくなって舞子さんが投稿されているお話を全て一気に読んでしまいました。素敵なお話これからもお待ちしてます、ずっと応援していきたいと思います。 (2018年2月5日 17時) (レス) id: 6877703fa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おおさきまいこ | 作成日時:2017年12月21日 6時