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にわか雨が降る夜、ある廃棄区画ではコミッサちゃんドローンが住民に注意を促していた。
その奥に張られた簡易テントには二人の男女がネオンで煌々と光る廃棄区画の様子を伺っている。
そこに雨に濡れながらショートカットの女性が息をきらしながら走り込んできた。
朱「あの…こちらに監視官の宜野座さんは…」
宜「俺だ。配属早々に事件とは災難だったな」
朱「本日付けで刑事課に配属になりました。常守朱です！どうぞ宜ーー」
宜「悪いが刑事課の人手不足は深刻でね、新米扱いはしていられない。」
朱「う……」
自己紹介も遮られ朱がつい戸惑いの声を漏らすが、それも流して宜野座は手首にあるデバイスから事件の情報をホログラムで表示し、つらつらと言葉を続けた。
宜「対象は大倉信夫。街頭スキャナーで色相チェックに引っ掛かりセキュリティドローンがセラピーを要求したが拒否して逃亡。
スキャナーの記録したサイコ=パスはフォレストグリーン。高い攻撃性と脅迫観念が予想される。」
朱「そんなに色相が濁るまで治療を受けなかったなんて…」
宜「何にせよ、シビュラ判定を待つまでもない。 潜在犯だ。」
宜野座は目前にある鉄の建造物を睨む。
宜「厄介なのは大倉が逃げ込んだこのブロックだ。廃棄区画で中継機がないためドローンが侵入できない。
それと逃亡の途中で大倉は通行人を拉致して人質にしているらしい」
朱「人質が…!?」
朱は驚き宜野座の発した言葉を繰り返した。
その時、
「どうぞ」
隣からスッとレイドジャケットを差し出される。その人物は宜野座の隣で佇んでいた女性だった。
朱はありがとうございます、と受け取りながらこちらを見て微笑む女性を見つめた。
この緊迫した空気の中で安心感を与えてくれるような笑みだった。
朱「あの、えっと」
「同じく監視官の立花亜紀です。
どうぞよろしく」
朱「よ、よろしくお願いします！」
朱がこちらに大きく礼するところを見て、亜紀は昔の自分を思い出した。
懐かしいな、、
記憶を溯ろうとしたその時、背後から装甲車が大きな音を立ててこちらに向かってきた。
朱「……護送車？」
宜「これから会う連中を同じ人間だと思うな。奴等は犯罪係数が規定値を越した人格破綻者だ。本来ならば潜在者として隔離されるべきところをただひとつ許可された社会活動として同じ犯罪者を駆り立てる役目を与えられた。
奴等は猟犬ーー
獣を狩るための獣だ。それが執行官。
君の預かる部下たちだ。」
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作者名：まっぽ | 作成日時：2015年4月18日 22時
