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「矢っ張り」
敦の目の前で、亜麻色の髪の青年が頭を抱えた。
自身の前髪をくしゃりと掴んで、少し硬直した様子だった。すると急に、ばん!と机を叩いて立ち上がった。
情緒不安定な青年に、如何対応したら善いのか判らない敦。ただ少し不安げに北森を見ていた。
「ごめん。ありがとう」
と書類を敦に返して、ビュンと効果音が付きそうな位の速さで、走ってうずまきを出た。
……一体、何だったんだろう。敦は、北森が釘付けになっていた資料に目を通した。これは太宰の資料だ。
「…武器庫?財閥…」
暫くの間敦もその資料に目を通していた、その五分後。
ちりん、と入店時の鈴の音が鳴ったかと思えば…ぜぇはぁと息を切らす北森の姿。凄い。此処から近場のコンビニまでそれなりの距離はある筈だ。
北森の片手には、何やら大きなコンビニの袋。一杯入って居る。
北森はつかつかと店内を進むと、ある人物の前で立ち止まった。
「ん?何ぃ?」
棒付き飴を食べて居た乱歩の前。
「治くんの場所教えて下さい」
北森も武装探偵社と関わって行く内に、乱歩がどれ程凄い人間なのかを知れたのだ。並外れた推理力。それが異能によるものでは無く、乱歩自身の力なのだと云う事も。
「えぇ?やぁだよ、太宰の事だからどうせ返って来るでしょ」
面倒臭い、と北森から目を逸らす乱歩。北森は先程の大きなコンビニの袋を、どさりと乱歩の前の机に置いた。
「全部あげる」
中には乱歩の好きそうな甘いお菓子が山程。少しお高い洋菓子まで入って居る。流石の乱歩もこの量には少々驚いていた。
「君、これ」
「俺には…『どうせ』とかに賭けられない。幾ら治くんが狡くて賢くても、俺には…!お願い、お願い江戸川さん」
乱れる、揺らぐ精神。北森が如何いった人間なのかは知っている。青年の瞳には焦燥、動揺、憎悪、虚無感。それらが混ざって色味を失っている。
「落ち着いてくれる?話はそれから」
「…落ち着いてる」
「嘘だね。君の目を見れば判る」
く、と顔を顰める北森。ならばと両手で目を隠して目を見られ無いようにする。
「いや無駄だから。君実は莫迦でしょ」
「ば…!」
それは乱歩に比べたらそうだ。だが真正面から莫迦など云われると若干腹が立つ。いや立つな。今はこの人しかいない。
「…莫迦です、けど…?だから教えて下さい」
寧ろ認めてやる。
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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