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「海だ」
乱歩が云った。
「倉庫街があるでしょ。その付近に孤立している倉庫が一つある。大方その倉庫のセキュリティは異能力によるものだ。だから太宰はセキュリティを外す要素として、持って行かれたね」
ぞわ、と全身の毛が逆立つ様な感覚がした。知っている。新道財閥が遺した武器庫。そこから海の研究所に繋がる通路がある。
だがそれは異能による頑丈なセキュリティが掛けられ、無関係な人物は絶対に出入りが出来ない。
然し、太宰が触れれば一瞬か。
「まぁ太宰は、態と連れ去られたんだと思うけど。君は居ても立っても居られない様だし…放って置いたら人造人間がごっそり出て来る可能性がある」
乱歩は全てを見透かす瞳で、「行って来なよ」と言葉にはせず、ただ頷いた。
「そうだ国木田ぁ」
乱歩は飄々とした口調で国木田の名前を呼ぶ。すると国木田は返事をしてスっと席を立ち、眼鏡を押し上げて乱歩の前まで来た。
「何でしょう、乱歩さん」
姿勢善く、直立不動。お堅い眼鏡。真逆とは思うが…。
「北森君と一緒に行って」
「はい。何処へ」
「太宰を持って帰るのと、人造人間の殲滅」
「はあ。…はい?」
国木田はまるで意味が判って居ない。それもその筈だ。今までの話を聞いて居なかった人間からすれば、意味不明の命令だ。
だが聞き返すのは少々失礼か。後で北森にみっちり聞こう。と国木田は取り敢えず肯定の返事をした。
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「で。如何云う事だ」
街を早足で歩く二人。北森は国木田よりも更に足早に歩いている為、国木田の少し前を歩いている。
「治くんが攫われた。きっと善い川流れてる所で連れて行かれたんだ。何やってんのあの人。本当に。本当に覚えてろあの莫迦」
自分の身を簡単に投げ打つ太宰が気に食わない。太宰に死なれたら北森が如何なるだろうか。
偶に地団駄を踏む様に歩く北森。そんな北森の様子を見て、何も云えなくなる国木田。
「一寸待ってて下さい」
そう云って青年が立ち止まったのは、集合住宅の前。
「判った。だが何をする心算だ」
「戻って来れば判りますんで」
国木田が黙って待つ事、三分後。
「すんません。行けます」
国木田の目に映ったのは、漆黒の青年。探偵社が彼に配給した仕事服。確かに先程までの格好では動き難かっただろう。
それにしても、
「着替えるの早いな」
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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