文豪共、酔い潰れて溺れろ。【文豪ストレイドッグス】−黒の時代−

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それからと云うもの、中原が週に一回か二回、北森が働くコンビニエンスストアに通うようになった。酒目当てだ。


バー『Lupin』では、如何しても三人の事を思い出して仕舞う為、マスターには申し訳無いが辞めてしまった。マスターは善い人で、たまに顔見せに来いとも云ってくれた。


北森は二度とこのような事が無いよう、更に他人との壁を厚く高くしていた。いつの間にか、笑顔の絶えない青年になっていた。



中原も、試しに下の名前で呼んでみろと試したが駄目だった。
太宰は下の名前で呼ぶのに何故なのだろうと、素朴な疑問が浮かんだのか「何で太宰は名呼びなんだ？」と聞かれた。



北森は直ぐに答えた。「治くんは特別だから」と。



あぁ、こいつかなり拗(こじ)らせてんなと中原は思った。




二年が経ち、北森は高校三年生になっていた。




一週間後に関東大会を控えており、その大会で入賞してインターハイに必ず出場してみせる。去年は怪我で出れなかった。




…若しも織田が生きていたなら、応援に来てくれたのだろうか。




あぁ駄目駄目だ。仕事に集中しなければ。



休日の五時頃。まぁ色んな人がお菓子やら何やら買いに来る時間帯ではないだろうか。



北森の輪郭は二年前より凛々しくなり、端正な顔立ちになった。身長はそれ程伸びていないが。


北森自身気づいては居ないが、此処のコンビニの店員が格好善いと女子学生の間などで少々噂になり、売り上げも上がっている。



北森は辞めた方が善い。北森だけは。何より性格に難がある。




今日もいらっしゃいませと得意の営業スマイルで客をお迎えする。



商品の陳列をしていると、つんつんと腕をつつかれた。



つつかれた方向を見ると、糸目で茶色いハンチング帽を被った何とも探偵らしい格好をした人に話し掛けられた。




「あ、如何しました？」




「これって如何するの？」




と、糸目の青年が北森に話し掛けた。片手にフローズンラテを
掲げている。




「あぁこれは…お会計して貰ったら、手で氷を解してからレジの横にある機械で、ホットミルクを注いで頂ければ飲めます」




北森はにこにこと愛想善く笑顔を振り撒いて云う。すると糸目の青年がふふんと自信げに発言する。




「ほらね社長、僕の云った通りじゃないか！」



「ほう、そうなのか。氷のまま食べるものだと思っていた」



和服を来た威厳のある男性が、糸目の青年の背後から、フローズンラテを覗く様に見ていた。


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