文豪共、酔い潰れて溺れろ。【文豪ストレイドッグス】−黒の時代−

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「速い速い。速度落として、落として？」



「チッ、乗り心地の悪ィバイクだな」



中原が北森を後ろに乗せ、横浜の夜の街を滑走していた。かなり速度制限を越えている。




「俺にも運転させてよ」



北森が目一杯 腕を伸ばした。




「辞めろ！未だ十五だろクソガキ！」



「中原くんだって十八なのにお酒飲むじゃん！」



ぎゃいぎゃいと子供の様に云い合う。ふと、中原の怒号がピタリと止んだ。何かと思い、北森も静まり返ると、後方から何やら警報が聞こえた。


警察車の音だ。




「これやばいよね？」




中原は顔を引き攣らせていた。




ヘルメット無し＋速度オーバー＋他人のバイク＋学生の深夜活動＝捕まる。


この完璧な方程式が二人の脳内を電撃の如く駆け抜けた。


中原はマフィアであり、警察など物ともしないが…捕まったら捕まったで面倒な事は確定している。




「…北森」



「何」



「強く掴まれ。振り落とされたくなけりゃな」




何を云う。男に強く掴まるなんてそんな事出来る訳がない。然しそんな事よりも捕まりたくない。学校も停学になって部活の練習も出来ずそうなったらインターハイにも行けず太宰に善い報告も出来ない。


そうなれば織田の墓参りも恥ずかしくて行けない。

胸張って安吾に万年筆も渡せなくなる。


考えて居たのは三人の事だった。




「お…、お願いします…」




中原も嫌だろうなと思いながら、北森は中原の胴体にぎゅっとしがみついた。





「んじゃ、飛ばすぜ！」




グンッと効果音が付きそうな程加速した。曲がり角では地面を摺る様な華麗なカーブを決め、警察車と距離を開けた。




「執拗ぇな、まだ来るか」





舌打ちをした中原。何か彼の役に立ちたい。銃があれば一瞬で終わるのだが…いや、よそう。北森は片手で自分のバッグを漁り始めた。



そうして手に取ったのは、小さな瓶に入ったエナジードリンク。瓶の形状が何処となく爆弾に似ている。



北森はそれっぽく口で瓶の蓋を開け、瓶を追ってくる警察車に向けて投げた。




すると警察車がそれを爆弾と勘違いし、避けようとした所、盛大に回転した。





「はは、莫ぁー迦！それ只の瓶だよ」




「ハハハ！手前中々面白えガキだな！」





両者とも疲れ切って居るのか、テンションが舞い上がっている。






「で、手前家何処だ」





中原が云うと、北森は少々申し訳無さそうに口を開く。






「…逆方向」





「早く云えよ呆気！！」




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