第九十七舞『大事なもの』 ページ47
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窓掛けが夕陽の赤で染められ、ゆらゆらと風に揺られていた。
医務室の寝台に横たわる端正な顔立ちの青年。金色の髪が、
向日葵の花弁の様にそよそよと靡いた。
「与謝野さん、アイザ君は?」
太宰はまだ病院から出ては行けない状態ではあったのだが、
如何してもアイザックの容態を見て置きたかった。
右手に松葉杖を持ち、被弾した左半身を庇いながらひょこひょこと歩いていた。
「後少し遅かッたら死ンでたね。アンタの相棒が血相変えて連れて来たよ。千切れた腕も持ってね」
「いやぁ…元、ですよ。お礼に爆弾でも仕掛けようかな」
太宰は、笑顔で与謝野に云う。しかし与謝野はそれに反応はせず、太宰をじろじろ見始めた。
「妾はアンタが生きてる方が不思議だよ。本当に心臓に二発被弾したンだろうね?」
「本当残念ですよ。心臓にぎりぎり当たって無いなんて、全く死に損ないました」
身体はボロボロになりながらも、笑顔を貫く太宰に与謝野は
呆れた様に溜め息を吐く。
そのまま流れる様にアイザックの顔へ視線を送った。
「気を失ッて居るだけさ。直ぐにでも目覚めるンじゃないかい。
本当にあの異能兵器を止めちまうとはね…驚いたよ」
アイザックの右腕は、与謝野の異能によって繋ぎ止められては居た。目覚めた時、正常に機能するかは定かでは無いが。
太宰はぎこち無い足取りで、アイザックの近くに歩み寄った。
「そりゃあそうですよ。アイザ君は私の自慢の…、」
そうして微笑み、誇らしく云った。
「友人ですから」
そんな太宰の、切なくも何とも云えない様な表情に、与謝野は
目を丸め、暫くして連られる様に微笑んだ。
「…そうかい」
太宰はアイザックの右耳に触れる。
「これは、もう要らないだろう?」
と、白銀のピアスを取る。
「…君が捨てた赤いピアス、病室の中で探すの苦労したんだからね。もう無くさないでよ」
白銀のピアスの代わりに、太宰は元々アイザックが着けて居た
赤いピアスを着けてやった。きら、と夕陽と赤く反射した。
「この時まで、大事に着けて居てくれたのだね。君は忘れて居ただけかも知れないけれど」
太宰の一言で、この赤いピアスが太宰とアイザックの間に、何か想い入れがある事だけは判った。
「そういや、太宰。アレは如何なッたンだい?」
「あぁ、ソレは社長と相談して、許可を貰いましたよ」
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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