第九十八舞『温かな花束』 ページ48
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目を開けると、赤い夕陽の日差しが入った。少し眩しくて、
上手く目が開けられずに居た。
「…まぶ、し」
右手の甲で瞳に入る日差しを遮断する。
「あれ…」
良く右掌を見た。これは間違い無く自分の右手だと認識する。
ぐっと握って、ぱっと開く。失った筈の右手が、機能している。
アイザックは重い身体を無理矢理起こす。寝台がギシッと軋む音がした。
「…何が、起こって…」
そう思ったのも束の間、パン!と云う音が幾つも聞こえた。
「はあ!?」
驚いて肩をビクつかせたアイザックに、沢山の紙吹雪と色鮮やかな紙テープがアイザックの上に降り掛かる。
やっと状況が掴めて、目の前を見ると先ず目に入ったのは、敦の姿だ。
敦は、空になったクラッカーを手に持っていた。
「お早うアイザック!」
「おぉ、お、おは…?」
アイザックの珍しく困惑した様な様子を見ると、後ろで松葉杖の太宰が吹き出して笑った。
此処に居るのは、二人だけでは無い。
探偵社員全員が、クラッカーをアイザックに放ったのだ。
何故クラッカーを放たれたのか、アイザックは判らない。
寝台の横に鏡花が立った。その小さな身体の後ろに、何か隠して居る。
「…?それ、何?」
「お花。おめでとう」
鏡花が輝かしい目で、花束をアイザックに突き出した。
アイザックは迷いながらも、素直にそれを受け取った
「アイザック…貴様と云う奴は善くやったとは云わんぞやりすぎだ与謝野先生が居らっしゃら無かったら貴様は今頃屍と化しているのだ大体だな」
「まぁまぁ国木田君、息吸わないと禿げるよ」
国木田からの説教をぼんやり聞いて居ると、太宰が巫山戯た様に割って入る。
すると、社員は道を開いた。開かれたその間から、武装探偵社の社長、福沢が姿を現した。
「アイザック」
福沢の低く威厳のある声が響いた。そんな声から名を呼ばれ、
アイザックは自然と緊迫した表情になった。
「見事条件は満たした。合格。採用だ」
寝起きで、まだ脳が働かないのだろうか?合格?採用?
「おや、アイザ君。まだ判らないのかい?」
そうして太宰は笑って、アイザックに手を差し伸べる。
「ようこそ、武装探偵社へ。
君の試験内容は、『犠牲者を出さず異能兵器を止め、生きて帰る』だ」
太宰が密かに、アイザックに秘密で進めて居た事だ。
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第九十九舞『きっと向いていない!』→←第九十七舞『大事なもの』
要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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