第八十五舞『融合セヨ黒血』 ページ35
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横浜の港。
南西の海に見える、巨大な鰐型の機械。
横浜の道路が足首の高さまで水浸しになっているのは、
千メートル先に居るこの巨体が、海面に上がって来た事が原因だった。
港に立つ一人の金髪の青年。
強い潮風で、衣服がばさばさと音を立てて靡く。
余りにも潮風が吹くので、髪も乱れる。
「不浄」
背後から、咳と共に篭った声が聞こえた。
アイザックが振り返ると、黒衣を身に纏った男が口元に手を当てて立っていた。
「遅いな、マフィア」
アイザックは何処か余裕のある笑みで、芥川に笑い掛けた。
途端に、芥川の黒獣が腕に巻き付いた。
「おい一寸、何だよ」
「太宰さんの直轄の
…拘束する」
されるがまま、アイザックの四肢は黒獣によって完封された。
太宰が芥川に任せて善いとは云って居たものの、下手すれば殺されそうな勢いではある。
「…痛いヤツ?」
アイザックは半ば悟って居た様だが、一応芥川本人に何をするか確認をした。
「無論」
心の準備も出来ず、黒獣の刃が腹部を貫通する。
アイザックは悲鳴を上げる事無く、只その痛みに顔を歪め、
口の端から血を垂らした。
そして、大量出血する部位を次々に切り裂かれて行く。
足元の海水に鮮血が滲んで、まるで真っ赤な川の様に成り果てる。
「まだ凍結はするな」
もうボロボロのアイザックの首元を、黒獣が締め付けた。
アイザックは地面に膝を着いた。
如何しろって云うんだよ。こんなになって、俺に何が出来る。
そう云ってやろうにも、上手く息が出来ない。
「アイザック・バシェヴィス・シンガー。覚えておけ。失敗
すれば八つ裂きにする」
すると、芥川の羅生門はアイザックから大量に流れ出る鮮血と交わる様に、アイザックの身体に纏わり付く。
「立て不浄。それを纏えば無理矢理にでも立てる筈だが。貴様はそれ程までに脆くなったか」
芥川の黒い外套が、アイザックに憑依していた。
アイザックが再び立ち上がると、足元の周りの水は飛沫を上げて飛び散った。
「残念…だけど…」
痛みは残っており、苦しそうに声を放った。
「俺が失敗すれば…あんたも、この街も、仲良く一緒に終わりだな…!」
口の中で唾液と混じった血。
これは全て、彼の力の糧となる。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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