死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第八十四舞『阻止セヨ孤高』 ページ34

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異能兵器を目の当たりにした途端、アイザックから溢れる殺意の
衝動。窓を開け、そこから飛び降りようとした。





敦や国木田が止めようにも、もう遅い。




アイザックは窓の枠に足を掛け、後一歩で飛び降りる寸前だった。








「アイザ君、待て」






静かに澄んだ太宰の声がアイザックの衝動を射止め、彼は
ぴたりと動かなくなった。



アイザックは窓の枠に足を掛けたまま、ふるふると震え出す。






「また、これかよ…！」






アイザックは、直ぐにでもアレを止めに行きたいのだ。




記憶を無くそうと…アイザックの一匹狼の姿勢は変わらず、
直ぐに単独行動に出てしまう。




あの異能兵器を相手に、単独行動はかなりの愚策であった。



アイザックの激情が、彼の判断力を鈍らせて居たのだ。





「莫迦だよ、君は本当に。その辺でお座りでもしてたら
如何だい？寒いから窓ちゃんと閉めて」





太宰に威圧の眼差しをぶつけて来るアイザックに、太宰は深い溜め息を吐きながら云う。



昔から、アイザックの単独行動には少々手を焼いて居た。





アイザックは不機嫌そうな顔で、太宰の言葉の通りに窓を閉め、会議室の椅子に乱暴に腰掛けた。





この傲慢で短気な青年が、太宰の声ひとつで番犬の様に云う事を聞くのだ。



この光景を、今まで散々アイザックにコケにされて来た者達が見れば何と云うだろうか。






「全くもう、私の胃に穴を開けたいのかな？」






そうアイザックを見た後、太宰は乱歩に問い掛けた。






「『防壁』は何分後ですか？」





「十分後だ。直ぐに連れて来る必要がある」






乱歩が連れて来る必要があると云う人物は、大規模防壁を展開
する人材の一人、芥川の事だ。






「了解」






芥川を連れて来る事は、太宰にとってはかなり容易な事であった。






太宰はもう一人の人材、アイザックに近付いて、へらへらと笑った。






「アイザ君、乱暴してごめんてば。私の話を聞いてくれるかい？」





アイザックは足と腕を組んで座っており、明らかに不機嫌そうだなぁ…と太宰は思っていた。






「別に…何すれば善い？」





「二十分後、あの異能兵器から高出力のエネルギー物質が光線の様に放出されると見ている。君と芥川君で、横浜の港に防壁を張って欲しい」





太宰の提案を理解するのが少々難しく、アイザックは首を傾げた。






「大丈夫、やり方は芥川君が知ってるよ。任せると善い」







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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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