[テニプリ] 氷帝にやって来たのは？ １６ 〜無敵の姫君〜

７６３．過去〜姫君は泣かない〜　２ ページ46

緋香里)あ……あ、あ…………

黒い服に身を包み、箱の中で眠る深夜に崩れ落ちる。
そしてただただ大粒の涙を流し続ける。

あの美姫の優勝から数日後――
家族である美姫と緋香里、そして親しくしていた越前家の人達だけの数人で静かに深夜の葬式を行った。

首を切った深夜は医師達の懸命な処置も空しく、二度と帰らぬ人になってしまったのだ。

リョーマ)深夜さん……うぐっ、ひくっ……

倫子)ぐすっ……

リョーマも倫子も眠るように動かない深夜を見、涙を流す。

南次郎)馬鹿野郎

そんな彼女等の隣で苦々しい顔で呟く南次郎。
拳を強く握りしめ、今にも深夜に殴り掛かって行きそうな目つきをしている。

しかし、その目つきは緋香里を見、悲しみを堪える姿に変わり、そして――







そして、緋香里の傍で寄り添うように立つ美姫を見て、思わず顔を背けた。


あの日から、美姫は抜け殻のような状況が続いている。
大好きな父親を失ったのだ。
そのような状態は仕方ないのかもしれない。

しかし、だ。
緋香里のほうは見ていられないほど痛々しい姿で泣きじゃくっている。

一方で美姫は、涙を流さない。
全く泣かないのだ。

南次郎)なんで、泣かないん、だ……？

緋香里ももちろん痛々しいのだが、南次郎にとって、美姫のほうが痛々しく映った。

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