15 ページ16
(政務官視点)
「シン、急いでください！」
「ん？ああ。」
「な、何笑ってるんですか、国民に危機が迫ってるんですよ？！」
道行く遊び人の噂話からただならぬ気配を察知し、急いでルメールの酒場に向かおうとしたのだが、シンはどうしてか全く焦っていない。
まるで見世物でも見に行くかのような様子でゆったりと闊歩する王に痺れを切らし、自分だけで走り出した。
ルメールの酒場が見えてきた。
そこには人だかりが出来ており、“間に合わなかった”のか、と奥歯を噛み締める。
＿＿が、そこには想像していたものとは全く違う景色が広がっていた。
.
＿＿ワアアアアアアアアアッ！
＿＿外国のあんちゃん負けるなーーッ！
＿＿少し手加減してやれAーーーッ！
中心のテーブルで次々と樽を空にする二人、それを取り囲むように人々が歓声をあげる。
なんと驚くことに、その声のほとんどは“処罰されるべき男”への応援。女は涼しい顔で居るのに対し、男は今にも卒倒寸前といった雰囲気だった。
そしてその女は紛れもないA本人だった。国営商館管理官最高責任者にして私の部下でもある、黒髪の元武官。
「な、何が……。」
「彼女程の実力者なら武力で解決しようと思えば簡単にできただろう。だが彼女はそうしない、なんでも悪者を作り出したくないらしいからな。」
いつの間にか隣にいたシンが昔を懐かしむような目で彼女を見つめる。
それにしても悪者を作り出したくない、か。
「……お人良しですね。」
「はっはっは、全くだ！」
刹那、ドンッと大きな音で場が静まり返る。
どうやらその音はあの大男がジョッキを机に置いた音らしい。この場にいる全員が彼の次の言動を待っている。
.
「……オレの、敗けだ。」
『お、じゃあ私の勝ちですか。』
意外とアッサリついてしまった決着に、群衆から歓声が沸き上がったのは言うまでもないだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (
レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです！これからも頑張ってください、応援してます！*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳴々 | 作成日時：2021年9月15日 0時
