55 ページ5
Aが夢ノ咲学院で特別講師として働き始めてから、早くも1週間が経った。
あれから、Aはあんずにプロデューサーとは何か、から教え、どういったことをするのかなどの話をした。
本職の仕事があって週に2,3日しか学院で顔を合せることができない中、『Trickstar』の革命を成し遂げるため、あんずもAの話を聞いて真面目に学んでいた。
一方、『Trickstar』のメンバーは、零から言い渡された個人練習を耐え抜き、今日からは『ユニット』練習という工程に入る。
『S1』を控えた折り返し地点のその日は、もちろんAも学院に来ていた。
『零ちゃんの指示でスバルくんと一緒に行動してきて、もう1週間だね。
学院にも慣れた頃だろうし、楽しくやってる?』
「まぁ……みんながいてくれるので、寂しさとかは感じません」
『そっかぁ〜。……そういえば、うちの弟にはもう会った?』
「弟……?そういえば、明星くんたちと同じ、『Trickstar』なんですよね?」
あんずの反応を見るに、まだ会ったことすらない様子だった。
『あの子もあの子で、自分が所属する『Trickstar』と、その敵である生徒会との間で板挟み状態になってて大変みたい。
苦労性なところは姉弟揃ってそっくりって感じ』
あんずは「あはは…」と苦笑いを浮かべる。
『……でも、あの子は私と違って、まだ救いがあるだけマシよね。
身近にある大事なものを棄て置いて傍観するしかなかっただけの、あの頃の私とは違うわ……』
「?」
不思議そうな顔をしているあんずを見て、Aは微笑む。
『ふふ、いずれこの学院の過去も話してあげなくちゃね。
知って置いたほうがいいことも、知らないほうがいいことも、この学院には多すぎるもの』
Aはそう言ってあんずの頭にポンと手を乗せ微笑んだ。
253人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もぶピ | 作成日時:2022年9月5日 1時