暗闇の中で (ページ10)

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6話ページ10

在瑠said

真っ暗だ。何も見えない。

でも恐怖は感じなかった。むしろ心地いい。
なんだろうここは、、何故私はここにいるんだろう。
なんだか思考がフワフワしている

暗くて何も見えないけれど、私以外に誰かいる。
先程からずっと何者かの気配を感じる。

「誰？」
と聞いてみるが返事は無い。

「ここはどこなの？」
質問を変えてみてもやはり反応は無い。

うーん…どうしたら反応してくれるのか唸っていると

「在瑠」
優しい女性の声だった。
ぼんやりとした頭で、そう言えば私はそんな名前だったななどと呑気なことを考える。

「在瑠ねぇ」
利発的で元気な声で呼ばれる。

「もう、起きる時間だよ。
早く行かないと飲み込まれちゃう。」
何かに焦っているようだった。

「飲み込まれる？」
一体何に？聞き返しても教えてはくれなかった。

温かい二つの光が現れる。

『行こう』
二つの声が重なる。
在瑠はその光に導かれて、歩を進めた。

ゆっくりと目を開ける。

知らない天井が目に入ってきた。見たことの無い部屋で、質素だが立派な部屋だった。
きっとこの屋敷の持ち主は高貴な人物なんだろう。

守麗の里は隠れ住んでいたからあまり大きな建物もなかった(結構ボロかった)し､その前はほとんどずっと野宿だった。

思い返してみればこんなに立派な部屋は、母と後宮を出た時以来だった。

そこで私は里での惨劇を思い出した。

紅……

紅が斬られた所までは覚えてる。でもそのあとが思い出せなかった。気絶でもしていたのだろう。

だとすれば、私今趙にいるのか。けど、あの兵士が私を殺さずにしておく理由がない。

では秦か。秦であったとしても生かす理由がない。
ならばここから逃げるのが先決だろう。

横を見ると見たことの無い剣が置いてあった。何の変哲もないただの剣だ。

誰の剣かは、分からないが使わない手はない。

私は剣掴んでガバッと牀から起き上がり、床に着地する。

ウッ

動くと全身に激痛が走った。特に腹部が段違いに痛い。

普段なら音も立てずに着地できるのだが、予想外の激痛で体勢を崩してしまった。

バタンと痛々しい音が部屋に響く。

早く逃げないと…と思うが、体が痛すぎる。
痛みには強い方だと思っていたがさすがに無理だった。

ドタドタドタと扉の向こうで誰かが走ってきたようだ。

スパーンと扉が勢いよく開けられる。

そこには綺麗な女性が立っていた。