暗闇の中で (ページ5)

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3話ページ5

この里に来てから、はや3年がたった。

守麗の長老こと、煎じい(せん)は孫である私をとても可愛がってくれている。

守麗のみんなは、とても温かい人ばかりだった。私のことを姉のように慕ってくれる琳(りん)という少女は、私のことを在瑠ねぇと呼んでくれる。まだ4歳でかわいい女の子だ。

この里で母の事、守麗のことを教えてもらった。

守麗は、暗殺・追跡・情報の売買などを行っているらしい。中でも追跡が守麗の最大の仕事であるらしい。足跡などの地面に残っている情報などを頼りに、標的の後を追うのだそうだ。

専ら闇社会的な仕事ばかりを担当しているらしい。趙王のお抱えとなり、他国に間者として入り込んでいるものも少なくないのだそうだ。

母は次期族長とうたわれ、剣の腕・追跡の術など全てにおいて優秀であったという。

母の死を聞いて多くの守麗が涙を流した。王の情報統制は徹底されていて、守麗ですら知らなかったそうだ。
守麗の様子を見る限り母はとても愛されていたようだった。

私はさらに母を誇らしく思い、心が満たされるのを感じた。

そこでわたしはふと疑問に思った事を聞いてみた。

「勢露という男が尋ねてきませんでしたか？」
彼はあの時はっきりと"里だ"と言っていた。

もしそれが、彼が私を捨てるための嘘では無いなら、彼はこの里に何らかの用があったはずだ。

煎じいの眉がピクッと動いた。

煎じいは、思い出そうとしているのか。はたまた、言葉を選んでいるのか、しばらく考え込んで言った。

「その男は、"この村に来て紅の娘が近くで倒れていた。
顔がよく似ているからすぐにわかるだろう"と言って去っていった。
わしにもあまりにも突然であったから、疑ったが探してみたところ、お主がおった。」

私には煎じいが真実を言っているのか、嘘を言っているのか分からなかった。

もし本当なら、彼は私に家族をくれた。捨てたようにしたのは、お互いの未練を断ち切るためかもしれない。

これは、私の勝手な思い込みだけれど。
そうでも思わないとやってられない。

私は守麗として生きていく。3年前、初めてここに来た時に決めた。

守麗は私の大切な家族だ。