暗闇の中で (ページ32)

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22話ページ32

在瑠は王騎軍本陣に着いたときにはヘトヘトになっていた

理由は簡単で、騰は在瑠を自分の前に乗せると「しっかり掴まっておけ」という言葉と共に爆走を始めたのだ。前には何もなく(馬の首もとはある)、手綱を握ろうにも騰がしっかりと握りしめているためそれも叶わない。一体何に掴まれというのか⁉

それになぜ騰はこの速さで目を開けていられるんだ⁉(私は途中から目をつむっていた)。一体騰は何を考えているのか、だんだん腹が立ってくる。

おおよそ誰かを乗せているとは思えない速度で走る騰の愛馬にもその怒りの矛先が向いてきたところで、私達は本陣に到着した。

「殿、只今戻りました」

「ンフ、騰、何か土産もあるようですが？」

「ハッ、そこらの森の中で捕まえてきました」

そう言って騰は、私の首根っこを掴んで父上の方へ差し出した。

「あれ、私の扱い雑じゃない？私は野うさぎが何かだったのか？」

私は口を尖らせて騰に抗議したが、騰は涼しい顔をして何処か遠くを見ていた。

「可愛いうさぎを捕まえましたネェ」

「ハッ、迷子の子うさぎでした」

「何だかおかしな方向に話が進んでいるのだけど…。いや、そもそも何で私がうさぎという前提で話が進んでいるんだ。まさか、彼らには私がうさぎに見えているのか？ありえないことはない…」

私が小声でブツブツと何か言っていることに気づいたのか隆国がは～とため息を吐きながら、私を現実に戻してくれた。

「で、在瑠は何をしに来たのだ？」

「…そういえば、戦の状況を聞きに来たんだった！」

「状況？」

隆国が眉をひそめ、私に話の続きを促す

「うん、今回の戦で鍵を握るのは中央軍っていうことは理解してる。中央は兵力差的に時間を掛ければ掛けるほどしんどくなる。だから右翼、左翼の戦場の状況によっては、明日の戦い方を変えないといけない。と思ってここまで来たの。」

隆国は目を見開き驚きながらも感心しているようだった。不意に、父上と目が合う。ただの一兵卒が口出しするなということだろうか、父親としてではない大将軍としての威圧的な目だった。そんな威圧に負けてなるものかと私も父上を見つめ返す。

「ンフフ、いいでしょう。左右、中央、そしてその後の策を教えてあげましょう。」

しばらくすると在瑠達は、軍議を終えた

「ありがとうございます。私が必ず父上を勝たしてみせます。」

「気をつけて帰るんですヨォ」

ハッと元気のいい声で返事して在瑠は闇の中に飛び込んでいった。