暗闇の中で (ページ4)

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2話ページ4

だいぶ国境近くまで来た。あれからずっと歩き詰めだったため勢露の足が止まったことに安堵する。

今までは、「疲れたから、休憩しないか」と提案しても「歩兵はもっと大変だぞ」という意味のわからん返しをするだけで、スピードを緩めることは無かった。

それなのに何故か彼は、何も無い森の中で足を止めた。
私は不思議に思って聞いてみる。

「ここで何かあるのか？」

「在瑠、手合わせをするぞ」
そう言って彼は自身の荷物を地面に下ろす。

私の話は完全に無視だ。
はぁーとため息をつく。彼が手合わせと言ったということは、真剣同士の打ち合いという訳だ。

生きて明日を迎えられるか怪しくなってきた。何故勢露がこんなところで手合わせを始めたのか不思議でしょうがないが、余計なことを考えていては殺されていまうだろう。

戦いだけに集中しようと目を閉じて、深く深呼吸をし、剣を構える。

そして、目をカッと開け彼の懐に飛び込んだ。

結果は一瞬だった。私は、ほとんど攻撃を流すことができずに敗けた。

致命傷とはいかないが、小さくもない切り傷が沢山できていた。最後は何とか防いだが、そのままぶっ飛ばされ木に激突し、私は意識を手放した。

次の日の早朝、まだ空が暁の色に染っている頃に私は目を覚ました。

昨日できた傷には綺麗に包帯が巻かれ、出血はもう止まっていた。

周りには誰もいない。ただ彼がくれた剣が、地面に深深と刺さっているだけだった。あぁ捨てられた。私は瞬時に理解した。
寂しい、と自分が感じていることに驚く。
決して弱みを見せまいとしていた相手を心の奥底では、大切に思っていたのだ。

我ながら、この矛盾した思いは笑うしかないなと感じる。実際には乾いた笑いしか出なかったが。

「捨てるなら、いらないなら、、包帯なんて巻いていくなよ………」

私は剣を引き抜き、大の字になって地面に倒れ込んだ。赤い空が私を異様に孤独に思わせた。

ザクッ

何かが、草むらを歩いた音がした。

私は咄嗟に剣を構える。

「誰だ」
私が尋ねると、1人の老人が姿を現した。

「貴方が在瑠ですか？紅(こう)の子供の在瑠ですか？」

私は、自身のの名を知っていて、母のことも知っている者がいたことに心底驚いた。

「お前は誰だ。何故私の母を知っている？」
再度尋ねると老人は、

「私は、紅の父親です。そして、守麗(しゅれい)一族の長老です。…詳しい話は里で」

そう言って私を手招きする。

そして、私は里に向かうことになった。