暗闇の中で (ページ30)

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20話ページ30

「もうすぐ、日が暮れる」

私のそんなつぶやきとともに、両軍の退却の銅鑼の音が辺りに響き渡った

両軍の退却が同時であったために私達は退路を作らずとも野営地に戻ることができた

「被害なく退却できて良かったよ」

譚の言葉にみんなが頷く

「…みんな、ごめんなさい。私のせいで、包囲されたし、みんなに守ってもらうことしか出来なかった。足引っ張っちゃて本当に、ごめんなさい。」

私は並んで歩いていたみんなの前に出て深々と頭を下げた

「気にしなくて良い」

故廊が私の頭をポンポンと軽く叩いて、先に歩いていく。他のみんなも、とにかく無事で良かったと言って歩いていく。誰も私を責めることはなかった

「明日から、頑張れよ」

礎顕は、ニヤっと笑って私の心臓の辺りを拳で軽く叩いた

「…任せて、絶対に勝とう」

そう言って赤く燃える空の下先に行った皆を私達は追いかけた

「は～、お腹すいた」

私のそんな訴えに譚がハハハっと笑った

「今食べたところだろう？兵糧には限りがあるから、我慢しなさい」

駄々をこねる子供をあやすように言われて、私はムッとした顔をする

「別に、我慢できるけどね」

私がそんな事を言うと、意地張んなよお嬢さんっと礎顕が茶化す

譚は、あげようか？なんて聞いてくる始末

「いりません！」

と叫んで私はそっぽを向いて座った

そうこうしていると、一人の伝令兵が伍の被害状況を確認しにきた。

礎顕が「なし」と答えると、伝令兵は驚いた顔をしてご無事で何よりですと言って、去っていった

「なんだ？あいつやけに驚いてたが、」

「在瑠の顔を見て驚いてたみたいだけど…」

鋭は変なところで勘がいいから厄介だ。

「さあ、私が若すぎたからじゃない？」

勿論そんな訳はない。彼は王騎軍の伝令班であり、よく城にも出入りしていた。だから私のことを知っていたのだろう。王騎の娘がこんなところにいれば誰でも驚く

鋭は納得していないようだったが、譚が話題を変えてしまったのでその話は切り上げられた

「そんなことより、明日の作戦はどうする」

譚はみんなに独り言のように問いかけた

「まず、左右の状況が知りたい。それ次第で戦局は大きく変わる。」

故廊の答えに私も賛同した

「まずは、左右の情報を集めるべきだ。私が行って来る。」

「左右の戦場を行き来はできないぞ」

「大丈夫、真ん中の人に聞いてくるから。」

私は礎顕に自信満々に答え、暗闇に向かって走った