暗闇の中で (ページ29)

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19話ページ29

趙軍中央は横陣を敷いている

横陣の端には騎馬隊がいる、横陣の弱点は端だがこれでは端を落とすのは難しい

私は、どうするのが最善かを考えながら走った

先ずは正面から敵の防陣を突破するしかない

まだ父上の作戦はまだ見えないが、今突撃させたのは歩兵だけ。騎馬隊は何も動かない、温存しておくのだろう

となると突破口は歩兵が作らなければならない

ひとまずは、兎に角敵を切り続ける

斬って斬って斬りまくる

肉が切れる久しぶりの感覚に高揚を感じた

私は今、笑っているのだろうか

返り血を全身に浴びながら、笑っているのだろうか

“壊れている”

そんな声が聞こえた気がした

その瞬間、強烈な血の臭いと死臭が鼻を貫いた

猛烈な吐き気と手の震えが私の体を襲った

敵を斬ろうとしても身体が言うことを聞かない

そんな私の異変に気が付いて伍のみんなが私を守るように戦ってくれる

「在瑠！しっかりしろ！死にてぇのか！」

礎顕の声が頭の中に響く

私は、、

死にたいのかも知れない

生に執着する気持ちはずっと前に失っている

大切な人が死ぬたびに私だけが生き残る

独りぼっちで、死にたくても先に死んだ者たちが私を生に縛り付ける

生きているのが辛い

もう、いいかな？

会いに行っても

「在瑠！」

みんなの声が遠くなっていく

『だめだよ。まだ、在瑠ねぇにはやることがあるでしょ』

『在瑠、飲み込まれてはだめ。貴方は独りじゃないでしょう。家族がいて、仲間がいる。今も貴方を守るために血を流している。何時までも怖がっていてはだめよ』

『『いつも見てるから』』

そうだ、私は怖かったんだ。ずっと

大切な人かいればいるほど失うかもしれない

だったら大切な人なんて要らないそう思ってた

だから独りぼっちだと思い込んでた

私は独りじゃない、今ならそう宣言できる

視界がクリアになっていく

吐き気も、手の震えもなくなった

「ちっ、きりがねぇ」

「完全に囲まれてしまった。他の伍も同じようだが、これでは連携ができないな」

「騎馬隊はまだなのか」

かなりまずい状況のようで、みんなの焦りを感じた

「鋭！」

死角から斬ろうとしていた趙兵を斬る

「在瑠！良かった無事で」

半分泣きそうになりながらそんなことを言われて、私は目を見開いて驚いてしまった

「う、うん。ありがとう、守ってくれて。みんなが無事で良かった」

「あとは、此処をどう切り抜けるか、だよ」

譚の言葉に私達は頷き、敵を斬りながら考えた