暗闇の中で (ページ25)

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16話ページ25

ぐすっぐすっ

私は、他の兵士達と合流するため一足先に城を出ることになった

そこで、王騎軍のみんなが見送ってくれているのだけれど…

皆が笑顔の中、一人だけ大泣きしている者がいた

「摎姉、泣かないでよ。私、死なないよ？」

「そ～ゆ〜う問題じゃないの。在瑠〜！」

寂しいよーなんて私に泣きついてくるもんだから私もどうすればいいのか分からなくなっていた

「ンフゥ、摎そんなにくっ付くと在瑠が困ってしまいますよォ」

見かねた父上が摎に声をかけるが、本人はだってだってーなどと駄々をこねている

そんな摎を見て、他の者たちは柔らかな笑みを浮かべていた

「生きて帰ってこいよ」

と録嗚未。

バカで猪突猛進な録嗚未だが、面倒見が良いのが彼である

「録嗚未こそ。私より死にそうだもん」

そんな冗談を言えば、彼はすぐにキレる。はずだったのだが、何故か彼は元気がなさそうに言った。ンな訳ねぇだろと

どうしたものか、と思い彼に話しかけようとすると

蝉が来た

否、騰が蝉を渡してきた

「帰ったら、蝉を返してくれ」

表情ひとつ変えないで、これを言ってのける騰はすごいと思った

おそらく、無事に帰れということなのだろうが、分かりにくすぎる

それに帰ってきた頃にはこの蝉も死んでいるだろう。いやまず、持っていかないが…

在瑠は騰の差し出した手をゆっくりと押し返して、丁重にお断りした。

それからも軍長達やその他の兵士たち、仲のいい女官などからも応援され、在瑠はやる気に満ち溢れていた。

「私、絶対に武功を上げて帰ってきます！」

行ってきますと威勢よく在瑠が言うと、皆が笑って送り出してくれた

その場にいた者たちは、在瑠が無事に帰ることを祈った。武功なんていいから、行きて帰ってきてくれればそれでいいと。

初めは、軍の力になるのではという思いもあって王騎軍で保護することにした。しかし、今では、戦場に出てほしくない。出来ることなら、武人としてではなく、女として生きていってほしい。誰よりも安全なところで、何不自由なく。

王騎や騰、軍長達は心の奥にそんな想いを持っていた。

だが、在瑠はこの世に生まれ落ちたときから、きっとそんな生活とは無縁だったのだろう。

それが分かるからこそ、彼らは在瑠の無事を祈り続けた。