暗闇の中で (ページ21)

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13話ページ21

「なっ、お前何してんだ」

蒙武は不思議そうに私の方を振り返ったが、正面の人物を見て固まってしまった。

目の前の巨漢は馬上から３人を見下ろしている。睨まれてはいないというのに、まるで一騎打ちをしているような威圧を感じる。

３人とも動けなくなってしまったが、私の背中には痛いほどに視線が刺さっている。きっと楚子だろう。

ピンと張り詰めた空気が漂い、沈黙が続く。

私は父上が話し始めるまでに言い訳を考えようと頭をフル回転させていた。

「在瑠、隠れる必要はありませんよォ」

チラッと父上の方を見ると禍々しいオーラが目に見えるほど出ていた。

しかし、ここで出ていかなければ怒られるのは確実だ。私は頭の中を整理して決心する。

私は蒙武という盾をついに手放した。

「ンフ、在瑠…騰から大体話は聞いています。なにか言うことはありますか？」

これは…完全に怒っている

まずい、と思ったが、あいにくさっき考えた言い訳が吹っ飛んでいってしまった。

目を逸らせば嘘だと思われるので私に出来ることが有るとすれば、睨み合いに勝つしかない。

「流石に無理か…」

「何がですかァ？」

心の声が外に出てしまっていたこと、それを父上に拾われたこと、その2つに驚いて動揺してしまった。

一回心が乱れると取り繕うのが大変で、みるみる目に涙が溜まって行く。

私が涙と戦っていると意外な人が声を出した。

「俺が会いたいと言った。それで蒙武に連れてきてもらった。」

「！」

私は口をあんぐりと開けて声の主、楚子の方を見た。

「ンフ、勇気は認めましょう。ですが、この王騎に嘘は通用しませんよォ。ねェ、在瑠」

そう言われて私は完全に思考が停止してしまった。

「申し訳ありませんでした！」

もう言い逃れは出来ないと思い、私は体を直角に曲げて謝罪した。

「続きは城で聞きましょう。帰りますよォ」

そう言って父上は踵を返して馬を進めた。

父上にならって私も歩き始めたが、楚子と蒙武と別れるのも少し寂しく思い、二人に駆け寄った。

「ねぇ、また遊びに来てもいい？」

私がそう尋ねると、蒙武がようやく調子を取り戻したようで「あぁ、いつでも来いよ。待ってるからな！」と威勢のいい声で返事をしてくれた。

楚子の方を見ると、静かに頷かれた。

「ありがとう！じゃあまたね」

私はそう二人に伝えて帰路についた。

風が3人の間を通り抜けていく、私達の運命が廻り始めた。