暗闇の中で (ページ16)

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9話ページ16

「在瑠、行きますよォ」

遂に咸陽へ行ける日が来た。
まだ自分の馬がいないので、荷車に乗せてもらった。

ガタガタと揺られている間私はずっと期待に胸を寄せていた

「ねぇ、咸陽まではどれくらい？」

「この速さで行けばもう1日もかからないですよ。」
荷車を引く馬乗る男性が朗らかに答えた。

「荷車は飽きた…か？」
私が口を開こうとすると前で話を聞いていた干央がそう言った。

「！、よくわかったね」

「案外わかるものだ。在瑠は顔全体で見ると分かりにくいかもしれんが、目を見れば分かる。」

干央に当てられたことに驚いた私が聞くと、表情の変化について指摘された。

「さすが干央、観察眼が光ってるよ」

「これはもはや観察眼などでは無いが……言っておくが、在瑠は分かり易いぞ。」

干央からの衝撃の事実に私は驚きを隠せなかった。

「そんなに？」

「あぁ、分かりやすい」

何がショックだったのかは分からないが、私は少し落ち込んでいた。

「在瑠はまだ子供だ。子供なんてそんなものだろう。」

そう言って干央は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「また、分かりやすいって思ったでしょう？」

「まあな」
ははと笑って干央が言った。そしてそれで私はまた不貞腐れるのだった。

「うわぁーすごい」
夕刻頃になって、私たちは咸陽にたどり着いた。
眼前には大きなが広がる。

先程まで不貞腐れていたのが一転し、「感動した！」なんて叫んでいる私に王騎軍の皆が笑みを浮かべた。

「な、なんで皆笑ってるの？」
視線を感じた私が問いかけても、頷かれただけだった。

「え、怖いよ。教えてくれないの？」
何かやらかしたかななんて考えながら、もう一度聞いた。

「いや、分かりやすいなーと。」
と騰が言った。

「さっきの話聞いてたの!?」

「あれだけ大きな声で騒げばいやでも聞こえる。」
騰は淡々と語る。

「もう、いいでしょう。早く行こう」
私は恥ずかしくて、ムスッとしながら言った。

それを見てまた皆が微笑んだ。

「いい加減にしてよ！」
そう言って私はそっぽを向いた。

王騎はそんな一連の流れを見てやはり微笑んだ。

全てに絶望したような顔をしていた少女が、こんなにも表情豊かになるとは…

「感慨深いですねぇ」
そうつぶやくと後ろから「ハッ」という声が聞こえてきた。
なんのことか分かっているのかいないのか。

王騎は個性が強い軍だと改めて感じた。

王騎軍は咸陽まであと少しの道をまた進み始めた。