暗闇の中で (ページ14)

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8話ページ14

録嗚未は矛を、私は剣を構える。
ちなみに私の剣は、王騎軍の訓練用のものだ。

矛が振るわれる。

軍長最強と呼ばれる録嗚未に力でかなうはずが無い。でも、私の真骨頂は速さと正確さだ。

吹っ飛ばされながら、録嗚未の剣筋を観察する。

戦場で出来るだけ多くの敵を薙ぎ払う。録嗚未の剣はそんなふうだった。

動きさえ分かれば、全部受け流せる。
幸い録嗚未の剣は重いし速いけれど、単調でもあった。

録嗚未が使うのは矛だ。矛は剣よりも長い代わりに細かい動きができない。
剣が有利な距離まで詰めることが出来れば、勝機はあるだろう。

ある程度攻撃を受けて、だいたいの行動を把握した。録嗚未の力が強いぶんかなり体力を消費してしまったが、どうにかなるだろう。

流すのは1回だけ、一撃で決める。

録嗚未の動きを見極めながら避けたり受け止めたりする。

録嗚未が横に矛を振るった。

＜今だ＞

私はそれを流しながら、しゃがむ。
そのまま一気に距離を詰めて、懐に入り込んだ。

このままでは対応されてしまうため、剣を構え直し、次は距離を維持したまま左に少し飛びのく。

そして死角から剣を突き出した。首をまっすぐと狙って。

「参りました」
と言って録嗚未は両手を軽く挙げる。

「録嗚未は力がとても強いね。流すのも難しかった。」
と率直に意見を述べる。

「ま、俺も鍛えてるからな。」
と録嗚未はニコッと笑った。

「それよりさぁ、在瑠の戦い方って危なっかしくないか？
全部最後の時のための被弾、てことは分かるけど…………」
録嗚未が心配そうに言う。

「戦場に出るのなら、少しでも体力は温存しておいた方がいい。」
敵が山ほどいるからな。と録嗚未は続けた。

「戦場か…」
私はまだ戦とか何とかがよくわかっていなかった。戦は私の大切なものを奪った。

そんなところにもう関わりたくない。そう思うのも普通だろう。

「ねぇ、録嗚未はどうして戦場に出るの？」
私は戦に身を投じるのにどんな理由があるのか気になった

「うーん、殿のためっ言ったらそんだけだな。」
録嗚未は少し考えてから、はっきりとした口調で言った。

「父上が大切だから？」
大切な人のために戦場に出る。そういうものなのだろうか。

「なんつーか、大切だからというよりかは……慕っているからだな。あの人について行きたいっていうか」
そこで録嗚未は私の顔を見て口を止めた。私が唖然として録嗚未を見ていたからだ。

「録嗚未って父上のことが好きだったの？」