暗闇の中で (ページ12)

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私はすぅーと息を吸い込んでから

「覚えている限りでお話します。」
と答えた。

私は、守麗の里でのことを語った。
身寄りのいない私を受け入れてくれた人達だったこと、紅という妹がいたこと、紅が目の前で殺されたこと。

王騎将軍、摎、騰は口を挟まずに私の話しを聞いた。

私が話し終えると部屋が静まり返った。

「泣いていいんだよ」
摎が私に言った。

確かに在瑠は、まだ一度も泣いていなかった。でも泣きたくない理由があった。

泣いてしまったら、その人との思い出が薄れてしまう気がするから。忘れることは絶対にない。でもそれは、記憶という記録だ。だからこそ、思い出という感情を含んだものを失うのが怖かった。

記憶が無くならない分、感情を忘れるのが怖かった。

「…大丈夫です。もう大丈夫」
在瑠は自分に言い聞かせるかのように答えた。

「そっか。私たちは在瑠の苦しみを理解することは出来ないかもしれないけど、一緒に背負うことはできるから。
困った時は、どうしようも無くなった時は、頼って欲しい。」

摎が言ったその言葉に在瑠は涙を流しそうになった。そして、この人たちになら私の血筋のことを話してもいい。そう思った。

「実は、私の血筋は特殊なんです。
母は守麗の人間でした。そして父は元趙王、孝成王です。」

話しを黙って聞いていた3人は揃って目を丸くした。

「では、貴方は趙国の王族の血を引いていると。」
王騎将軍が確認するように問いかけた。

「はい。
私の母は、後宮から逃げ出したんです。
そして母の故郷である守麗の里へ私を…」

「守麗一族、その名を中華に轟かせる一族。
趙王が抱えていると聞いていましたが、その力が秦国に渡ることを恐れたのでしょう。」
と騰が言った。

「ええ、そうでしょうねぇ。守麗に追われれば待ち受けるのは死、と言われているくらいですからねぇ。

よく頑張りましたね」

王騎将軍は私に向き直りはっきりとした声で言った。

また涙が出そうになる。ここは温かすぎる。守麗の里のことをどうしても思い出してしまう。

「ですが確かに貴方の血筋は面倒ですねぇ。」
王騎将軍は、少し考え込むように言った。

「いっその事、養子にしては？」
騰の発言に在瑠と摎が固まる

「そうすれば、手を出しにくいでしょう。」
騰の発言にンフゥフフと王騎将軍は笑っている。
摎はまだ頭が追いついていないようだ。

「いいでしょう。今日から貴方は王在瑠。
貴方を娘として引き取ります。」