暗闇の中で (ページ2)

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1話ページ2

在瑠said

私には記憶がある。
生まれた時からずっと。

勢露は、それを知っている。だから私に名前を聞いてきた。「お前の名を教えろ」と。

それは私が言葉を話せるようになってすぐの事だった。

私を守って死んだ母がくれた名、"在瑠"

生前母は人前で決して私の名前を呼ぶことはなかった。きっと王に名が伝わることを恐れたからだろう。

「在瑠」っと答えれば彼は満足気に

「良い名だな」っと言った。

彼に名を教えたのはまずかったかもしれないが、私と母をつなぎとめるこの名をずっとずっと胸を張って使っていきたいという思いが勝ってしまった。

彼は私の剣の師だ。

もう7年も一緒にいるけど、彼から愛情を感じたことはない。
彼に弱みを見せるべきではないと思っている。

そんなこんなで感傷に浸っていると彼に声をかけられた。

「在瑠、稽古するぞ。剣を持て」

そう言って彼は木刀を構える。独特な構えだ。剣をまっすぐ前へ向け、突きをするようなポーズをとる。一見隙がありそうで、ない。そんな構えだった。

「わかった」

私は真剣を握った。この剣は勢露がくれた剣だ。母が使っていた剣は、刃おれが酷く使い物にならなかった。
私は、中段で真っ直ぐに剣を構えた。

「殺す気で来い」
そう言って彼は剣を振るう。

落ち着いて彼の剣を流して行く。まともに受けたらひとたまりもないだろう。流しの技は彼から習った。稽古をつけてもらってから4年ほどたち、ほとんどどんな状況からでも流せるようにはなってきている。それでもまだまだ彼には及ばない。

「ッな」
彼が急に剣の振りを変えて来た。今までの単調な攻撃とは違う。

流しきれなくて、咄嗟に剣で攻撃を防ぐも後ろへ吹っ飛ばされる。

「どうした、それで終わりか？来い」

どうやら稽古を終わりにはしてくれないらしい。
ふぅーっと息を吐いて、前に飛び出す。最大のスピードを出して彼に斬りかかるが、手応えは無い。全て流されてしまっている。相手に攻撃が当たらない。
次第に押され始める。

「ッがは」
剣に気を取られすぎて、横から蹴りが来ていることに気づかなかった。蹴りが見事に腹部に命中し、頭が真っ白になる。その一瞬に彼は私に斬りかかった。

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