懐かしきカノジョ zm.Ver（ﾘｸ） ページ26
気づけば僕だった。
僕には満たされない空腹と、何も覚えていない空虚感だけがあった。
ただ食べるものを求めてさまよい続けた。
いずれ、人間は僕を避けだした。
数日食べなかっただけの胃のはずなのに何億年も食べなかったような空腹感を抱え何かないかと海辺を歩いていたら、
懐かしい蜜色の髪を見つけた。
彼女を知っている訳では無いはずなのに、そこはかとない懐かしさを感じた。
彼女が手に持つクッキーは美味しそうな匂いを漂わせていた。
「おい、しそ」
空腹に耐えかねた僕はつい言葉を零した。
君は持っていたクッキーの半分を差し出して
「半分こする？」
と涙を浮かべた顔で笑った。
その小さな欠片は僕の大きな口には小さすぎて一口で食べてしまってまだまだ腹は満たされなかった。
世界の全てを食べても僕の腹は膨れないんや
その言葉を聞いても君はにこりと笑って
「食べに行こうか」
と僕の手を引いてレストランに連れてった。
出されたものを片っ端から平らげていく僕を見て彼女は笑みを零す。
笑われる意味がわからなくて問い正せば今度は急に泣き出した。
コロコロと変わる君の表情に戸惑って、俺の片手で覆うことが出来そうなほど小さな顔の小さな頬に触れた。
どう慰めていいのかもわからず、
「泣かんといてや、あんた泣かしてるもん食べたるから。なぁ、僕あんたが笑ってる方が美味しそうで好きや」
なんて変な慰め方をしてしまった。
でも君は「美味しそうって……」
と困ったように笑ってくれた。
「もうお金ないや」と店を出たが、まだまだ腹は満たされない。
食べることを考えてる間に君はどんどん人気のないところに行き、突然立ち止まった。
「どしたん？」
「あなたは覚えてないかもしれないけど、私はずっとあなたのそばにいたの。ずっとそばにいたかったの。」
「？」
訳が分からない俺をよそに彼女は後ろを向いて俺に微笑んだ
「私を食べて」
俺は耳を疑った。
「ええの？」
ずっと食べてみたかった。白い肌、密色の髪、翡翠の瞳に嫋やかな体をずっと味わいたかった。もしかしたら君を食べれば僕の腹は膨れるかもしれない。
君が大きく頷いたのを見て僕はその大きな口に君を放り込んだ。
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ケントゥム - 憑き物って「トワイライトプランク」ですよね！！気付いたときめっちゃくちゃ嬉しかったです！！ (2022年7月22日 10時) (
レス) id: 3dc9f6a52b (このIDを非表示/違反報告)
卍エシラ(プロフ) - 紅覇さん» ありがとうございます！ (2020年5月2日 21時) (レス) id: 62414ec622 (このIDを非表示/違反報告)
紅覇 - 悲しすぎて胸の奥がキューってなりました。これからも頑張ってください！！ (2020年5月2日 14時) (レス) id: 6f781d8dfc (このIDを非表示/違反報告)
卍エシラ(プロフ) - 雪鈴さん» これが書きたくて仕方なかったので長くなってしまいました (2020年5月2日 13時) (レス) id: 62414ec622 (このIDを非表示/違反報告)
雪鈴(プロフ) - ……鬱先生、哀しすぎる…ついウルッと来てしまった…｡ (2020年5月2日 13時) (レス) id: 19448fa7ba (このIDを非表示/違反報告)
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