Love*3-10 ページ10
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ほぼ毎日、家と劇場の行き来だけで
1日が終わっていた。
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今日は、昼公演と夜公演があって、
私は夜公演だけの出演だった。
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楽屋でいつも通り、メイクをしていたら
楽屋口をノックする音が聞こえて、
手を動かしながら、返事を返す。
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「姫、おはよ」
「おはよー」
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姫、と私を呼ぶのは浩樹くんしかいないから、
顔を向けなくても誰か分かる。
…最も、ここ数か月一番声を聞いている人の中の一人だから、
呼ばれなくてもたぶん分かる、けど。
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「、あれ今日優馬くんだよね？」
「…間違えた」
「うそ？」
「うそ(笑)、」
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もー、なにそれ、と思わず笑ってしまう。
メイクはいったん中断して、なに？と首を傾げたら
彼は、明日休演日じゃん？と言った。
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「ん？…うん、」
「だから夜公演終わったら中打ち上げするんだけど、」
「…」
「姫も来ない？」
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できれば、外には出たくなかった。
だけど、せっかくの好意を無下にするのもなあ、と思う。
稽古中から、時間があるキャスト同士でご飯に行っていたみたいだけど、
私は途中で抜けたり、稽古後に仕事あったりしたから、
一度も参加できていない。
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「う、ん…」
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楽屋の隅で手帳と携帯を開いている黒川さんを、ちらり、と見る。
やめときなさい、と言われたら、素直に行くのはやめよう。
打ち上げが、今私の周りをうろうろしている、
″ネタ″の餌食になるには、あまりにも程遠いとは思うけど。
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「帰りは迎えに行きますよ」
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黒川さんが、顔を上げて
にっこり笑って、言う。
"行ってもいい″ってことだ。
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「、浩樹くんも、来る？」
「もちろん、」
「…じゃあ、行こうかな」
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打ち上げに来る本人がわざわざ直接誘いに来てくれて、
帰りは迎えに行くってマネージャーが言っていて、
明日は公演自体の休演日で。
ここまで揃っているのに、断るのもなんだか失礼な気がする。
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「よっし！じゃあ決まりね。出るとき声掛けるから」
「うん、」
「支度して待っといて」
「わかった」
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頷きながら返事をする。
じゃあ、夜公演頑張って、と言って
ひらひらと手を振ってこちらに背を向ける。
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ふ、と息を吐いて
手に持っていたアイペンシルを持ち直して
鏡の中の自分と向き合ったときに、
「浩樹おはよー！」という優馬くんの元気な声と
「ほんとお前うるさい」という浩樹くんの声が聞こえて、くす、と思わず笑った。
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