Love*3-45 ページ45
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千秋楽の前日に、
相葉くんが観に来てくれた。
ギリギリに時間ができたみたいで、
終演後、楽屋に顔を見せるまで、知らなかったくらい。
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俺が最後？みんな来たでしょ？って
無邪気に言う彼に、
翔くんは来てないよ、って言ったら
なぜか彼が傷ついたみたいに瞳を揺らした。
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笑わなきゃ、と思った。
心優しい彼が、傷つく必要なんてこれっぽっちもないんだから。
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終わりが来る。
始まりがあれば、終わりがある。
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大千秋楽の相手は、浩樹くん。
稽古の時から、私のパートナーだった人だ。
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劇場内に、開演5分前のアナウンスが流れる。
それを聞いて、いつものように舞台袖で深呼吸をしていると、
姫、と数か月聞いていた声が私を呼んだ。
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「千秋楽、」
「うん」
「頑張ろうね」
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稽古期間を含めたら約3か月。
私は、成長できただろうか。
差し出された手と手を合わせて、ハイタッチをしたら
彼はいつもみたいに、優しく笑った。
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手首を掴まれて、手の甲に浩樹くんの唇が落ちる。
目線を合わせるように
身長の高い彼が屈んで、口を開いた。
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「愛してるよ、マリー」
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ぶわっ、とよみがえるのは、初日の光景。
あの時も、ここで、彼は同じようにキスをして
同じ言葉を私に掛けた。
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あの時私は、人前に出ることに怯えていて、
不安しかなくて、何もできなかったけど、
1か月半かけて、きっと私は何かを変えた。
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ふ、と笑って私から離れようとする彼の腕を引っ張って、
そのまま背伸びをして首に抱き着く。
あなたが、最後までおまじないを掛けてくれるなら、私だって。
あなたが、最後までマリーを愛してくれるなら、私だって。
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「わたしも」
「、」
「私も愛してる、リオネル」
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耳に唇を近づけて、
そっと囁くように告げたら、
彼が私の背中に腕を回して、ぎゅ、と力を入れた。
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そして力を緩めて、私と目を合わせて
にっこり、彼が、浩樹くんが笑う。
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「頑張ろう」
「うん、がんばろ」
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そう言って、離れていく彼の姿を見ながら
背筋を伸ばす。
目を閉じて、息を吐いて、マリーを降ろすこの作業も、これが最後だ。
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一国の王女として、気高く生きるのも
彼との愛に溺れるのも
感情を殺して冷たく笑うのも。
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これが、最後だ。
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