Love*3-43 ページ43
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3本収録を終えて、楽屋までの廊下を歩く。
何か変わったわけじゃない。
カメラが回っていないと、彼は私の方を見もしなかったし、
だから必然的に目が合うこともなかった。
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カメラが回って進んでいく収録の中で、
翔くんが私の方を見るのも、
私に話を振るのも、相槌を打つのも、全部台本通りで。
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何も変わらない。
だって、あの夜のことは、夢だったんだから。
誰も知らない、夢かどうかさえも分からない、夢。
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控室前の廊下で、見慣れた後ろ姿を見つける。
…翔くんだ。
一緒にいるのは、女の人。
スタッフさんかな。
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楽しそうに話す2人の横を通り過ぎる。
別に疑ってなんかいないし、
仕事の話だって分かっちゃうから、何も言えないけど、
カメラが回ってないところで、あんな風に話せるその人を、
羨ましく思う自分は、やっぱり、暗い。
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衣装から私服に着替えて、
メイクを落とそうと思ったけど、
なんだか面倒になって、メイクルームを抜けてそのまま楽屋に向かう。
楽屋の前には、黒川さんがいた。
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「…かえる、」
「はい、荷物は中です」
「うん、取ってくる」
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扉を開けたら、私服に着替えた翔くんが、
椅子に座って携帯をいじっていて、私の方を見た。
…目が合って、一瞬動きを止めてしまったけど、
そのまま鏡台の前まで移動して、定位置に置いてある鞄を手に取る。
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「、お疲れ様」
「待って、」
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目も合わせずに言葉だけを落として出口に向かおうとした私を、
低い声が、引き留める。
馬鹿正直に止まった脚を、恨む。
…だって絶対、嫌なこと言う。
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「怒ってる？」
「おこってない、」
「あれ、スタッフだから」
「分かってるよ、」
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そんなの分かってるよ。
別に怒ってないもん、気にだって、してない。
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「翔くんが別に誰と仲良くしたって、私には関係ないもん、」
「…」
「だから、おこってない」
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自分が言われて傷ついた言葉を、
そのままそっくり返す私は、汚い。
黙った彼に、かえる、と告げて今度こそ楽屋の出口に向かう。
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「…あっそ、」
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突き放すような言葉に、
ぐぅ、と胸の奥が掴まれたみたいに痛む。
かたん、と椅子から立ち上がる音がして、ちらり、とそっちを見ると、
ぱちん、と目があった。
好きが溢れる。
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好き、なんだよ、
大声で叫んだら、少しは楽になるのかな。
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