Love*3-33 ページ33
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頬をたどる指を握る。
キリキリ、と爪を立てると、彼の顔が微かに歪んだ。
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「、痛いって」
「…」
「こら、A、」
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名前を呼ばれて、堪らなくなって、
首に手を伸ばして抱き着く。
鎖骨に鼻を埋めて、ぎゅうぎゅう抱き着いたら、安心して、また泣けた。
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「翔くん、」
「はい、」
「翔くんの匂いがする…」
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パーカーから消えた、彼の匂い。
私が大好きな、落ち着く香り。
心がじんわりと暖かくなって、息苦しかった呼吸が楽になった気がする。
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子どもをあやすように、
身体が前後に揺らされる。
後頭部に回った手が、優しく髪の毛を撫でて、
彼がここにいることを感じられる私は、今世界で一番幸せ者じゃないかと思った。
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「体調は、」
「、」
「大丈夫なの、」
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耳もとでぽつり、と尋ねられたそれは、
確実に私に向けているそれで、
ああ、だからここにいるんだ、と妙に納得した。
何か理由がないと、来るはずない。
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「倒れたって聞いた、」
「うん、」
「うん、って…そんな簡単に、」
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確かに、今日は朝から体調が悪かった。
貧血なのも、軽い栄養失調なのも、
心当たりがありすぎて、特段驚くことじゃない。
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「カーテンコール終わって、緞帳が下りて、倒れたの」
「…」
「本番中じゃなくて、よかった、ほんとに」
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公演中に倒れるなんて、
今頃どんな騒ぎになってるか、想像しただけでゾッとする。
きっとまた、あることないこと書かれて窮屈になるだけだ。
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「…心配、してくれた？」
「はあ？当たり前のこと聞くな、」
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少し低い声が、私の鼓膜を直接震わせて、
脳に届いて刺激する。
もっと近くで聞きたくて、抱き着く腕に力を入れて、
耳を彼の顔に寄せた。
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「大丈夫なの、身体」
「大丈夫だよ、全然、へいき」
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再度尋ねられたそれに、
すぐに笑って言葉を返す。
強がりも、嘘をつくのも、得意だ。
…嫌な大人。
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「、そう。無理すんなよ、あんまり」
「…無理しないと、できないんだよ。必死にやらないと、マリーになれない、」
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無理をして、必死に頑張って背伸びして、
そうでもしないと、周りに埋もれて、
マリーとして、一国の王女として生きられない。
それを、きっと彼は知らない。
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