Love*3-23 ページ23
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ニノは、次の日の昼公演に来てくれた。
楽屋にひょっこり顔を出して、
鏡台の前に座ったままの私にゆっくり近づいてくる。
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「おつかれ」
「うん、」
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よかったよ、と軽い感想を添えて
手に持った小さな紙袋を私に渡す。
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「、なあにこれ？」
「それなら食べれるかな、と思って」
「…」
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中身を覗くと、
一口サイズのかわいいゼリーがたくさん入っていて、
思わず彼の顔を見る。
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「ばれてた、」
「あのさあ、何年一緒にいると思ってんの？」
「…そっか」
「食わないと倒れるぞ、まじで」
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うん、と素直にうなずいておくことにする。
たぶん、食欲がないことはばれてるけど、
美味しいと感じないことは、バレてない、きっと。
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「あんま無理すんなよ」
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薄く唇を上げて、
ゆらり、と笑う表情は
私のことを本気で心配してくれているそれで。
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「じゃあ、俺仕事あるから」
「うん、ありがとう」
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本当に、時間を作って
来てくれたのが分かる。
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ひらり、と手を振って楽屋から出ていく後ろ姿は
いつも見る猫背と同じで、
よく分からないけど、よかった、と安心している自分がいた。
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手に持った紙袋を、楽屋の隅に置いた。
時計を見て、夜公演までの時間を逆算して
そのまま備え付けのシャワールームに足を向ける。
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一人になると、考えてしまうのは
昨日の彼からの言葉で。
私は、知ってる。彼が中々に嫉妬深いことも、
″いつも″だったら、他所の事務所の人と仲良くすることを
あまり良しとしないことも。
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それはきっと、
私が彼の″彼女″だからで
だとしたら、無関心なのは私は恋人じゃないからなんじゃないか。
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そこまで考えて、
じんわりと涙がにじむのが分かる。
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ただ一言、好き、って言ってくれれば
私はもう少し強くなれるかもしれないのに。
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暖かいお湯に、涙が溶けていく。
胸の奥がなんだかキリキリと痛かった。
…誰にも吐き出せない気持ちがたまりすぎて、
限界だ、と思えて、また、泣けた。
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