打ち上げ花火【8月4日】 ページ6
「打ち合わせ行ってくるな〜?」
と言って夕方に出かけてしまった志麻くん。
今日の夜は何がいいかなぁと考えてる間に七時になってしまった。
そういえば何も準備してない。
どうしようどうしようと考えてキッチンに立つけど、思いつくのは志麻くんの好きなものばかり。そこから選ぶのにとても苦労する。
ん〜と唸っていると
ドンドンッッ
外からすごい大きな音が聞こえると共に地響きに近いものが建物を襲った。
聞き覚えのある音。カーテンを開けて外を見ると大きく色とりどりな花火が夜空を華やかに飾っていた。
「きれ…」
大きな音や人が多いところは苦手だから花火大会とかお祭りとかはあまり好んでいくことはないけれど、花火自体は好きだから見入ってしまう。
「ただいま〜」
彼の声も聞こえなくてベランダに立って花火を見ていた。
「A〜?…あ、いた…どしたん?」
「…あ、っ…志麻くんおかえりなさい」
「ただいま、あれ、花火?」
「うん…綺麗…」
志麻くんは私の腰に触れながら一緒に花火を見た。
「花火久々に見たなぁ」
「……たい?」
「ん?」
花火の音で聞こえなかったのか彼がもう一度優しく聴き直す。
「花火…見に行きたい?」
だって彼がお祭りや花火に行きたがらないのは私が苦手だから。彼なりの気遣いがあるから。
「行こう」と彼から誘われたのは付き合って最初のお祭りだけ。花火の音に肩を揺らす私をニコニコと笑いながら守ってくれたのが最初で最後の二人のお祭り。
「ん〜?Aあんまり好きやないやろ?」
「違くて…私とか関係なしに…」
「Aとやったらこうやって遠くから眺めてるだけでもいいけど?」
関係なしに、って言ってるのに、なんて思いながらふふっと笑う。
私の頭を撫でる彼の手が温かい。
「あ、そういえば夜ご飯まだ?」
「…ぇ、あ、忘れてたっごめんなさい!すぐ作るね!」
重要なことを忘れていた。
いけない、と思ってベランダから出ようとすると彼が制した。
「あ、じゃなくて、買ってきたから一緒に食べよ?」
私の彼氏は天才だったらしい。
「花火見てるって思わんくて教えてあげよーって思ってたから…」と言って焼きそばやお菓子の綿菓子などお祭り定番のものを買ってきてくれていた志麻くん。
「ありがと…」
「家でお祭りも悪くないやろ?」
幸せってこういうことなのかも。
rq:花火
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美麗@ラ - 完結おめでとうございます、そして1ヵ月お疲れ様でした!れおなさんの書く志麻くんがドタイプすぎて…笑最高でした!れおなさんの作品他も色々読んでます、大好きです! (2021年9月5日 13時) (レス) id: 898ecf2a8e (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - 1ヵ月間ほんとうにお疲れ様でした!夏休みの楽しみが増えて、とても嬉しかったです!最高でした…!!評価は何十回も押してますよ!どうして1回しか押せないんでしょうね!!そろそろ運営に殴り込みにいこうかなとおもってます!! (2021年8月31日 23時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
暁の天(癒樂)@SOS同盟(プロフ) - 1ヶ月間お疲れ様でした!凄くあっという間にこの日を迎えてしまったなぁ、と少し寂しく思います… 本当に毎日お疲れ様でした!ありがとうございました!! (2021年8月31日 18時) (レス) id: bfed5c7004 (このIDを非表示/違反報告)
aoino(プロフ) - 1ヶ月間お疲れ様でした!毎日この小説の更新が楽しみで通知があるとワクワクしていました!ありがとうございました! (2021年8月31日 17時) (レス) id: f3a5a28b66 (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 一ヶ月更新お疲れさまでした!毎回すごく楽しかったです、、、ありがとうございました! (2021年8月31日 13時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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