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こう言う時に限って、空気を読んでくれない私の意識は失われることもなく、ただひたすらに過呼吸に近いその状態で苦しむだけ。
ずっと私の腕を掴んでいた兄さんはその力を緩めた。その反動か、一瞬体が前のめりになったのを、赤司くんが支えてくれた。
「俺は貴女を責めたいわけじゃないんです。ましてや、貴女の望まないことだってしたくはない……ただ、貴女を待つ人が先生……いえ、黒子テツヤだけではないと、知って欲しかっただけなんです」
言い訳のように紡がれた言葉に、優しく背中をさする手に、私は訳が分からないほど怯え、同時に安心していた。
私を支える赤司くんは、中学生とは言えど確かに「男の人」だった。
赤司くんは先程まで綺麗に弧を描いていたその口で、私を安心させるように言葉を投げ続けた。呆然と見守る兄さんを牽制するかのように。
落ち着いた頃には、赤司くんは私にその瞳を向け、じっと見てきた。
「…………赤司、くん」
「何ですか?」
「……私は」
小さな声で言葉を紡ぐ。
頭に浮かぶ兄さんとの思い出たちが私を笑っていても、例えその記憶たちが兄さんによって作られた「幸せ」だったとしても。
「……私は、やっぱり選べない」
「Aさん……」
「でも……だから、教えて欲しい。私が忘れていることを、私が知らない私の過去を」
後ろで、兄さんが息を呑む音がやけに大きく聞こえた。
「……貴女が望むなら、俺は」
そう言った赤司くんの瞳を見つめ返し、それから視線を兄さんへと移した。
「……兄さん、ごめんね。今まで、ただ兄さんを信じて、兄さんについて来たけど……それが本当に正しいのか、もう分からない」
「……だから、僕の手を取らないんですか」
「どっちの手も、取れないよ。私は何も覚えてない。二人がこうして必死になってる理由も、意味すら分かってない」
そう言い切ると、兄さんは「だったら!」と声を荒らげた。
「何も覚えてないAは、何も知らないAは、そのAだけは、知る知らない知りたい知りたくない以前に、僕を選ぶべきです!」
兄さんの言いたい事は分かる。私はきっと、何を躊躇うことなく兄さんを選ぶべきだった。
「選べない」と兄さんの手すら握り返していないこの状況は、どう考えてもおかしい。そう言いたいんだと思う。
でも、違う。
違うんだよ、兄さん。
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堕天使ルイ - なんか、ちょっと内容が分からなくなってきました。自分の理解能力の無さでw 続き楽しみにしてます。更新頑張ってください。応援してます。 (2018年3月20日 21時) (レス) id: 3344530ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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