Lost Junk!

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混乱を極める中、阿部はその頭脳をフル回転させていた。
向井から零れた｢仇｣｢そっくり｣｢さくまだけは違う｣と資料に書いてあった｢グループS｣。
そして、向井の首筋の｢S-06｣。

…いや、待て。向井が｢06｣という事は、
阿部｢さくまは、｢S-08｣…？｣
あの資料に書かれていた唯一｢記憶処理の施されていない被験者｣の番号ではなかろうか。
じゃあ、つまり、向井の言葉の意味するものは？

阿部｢…康二、｣
自分でも酷く落ち着いた声だったと思う。
阿部｢｢人狼｣っていう昔のゲームを用いて行われた心理実験で、｢S-08｣という被験者だけが計5回の実験で1度も記憶処理を施されていなかった｣
向井｢……は？｣
阿部｢5回行われた後、その実験は行われないまま研究所は｢何者かの襲撃｣によって壊滅された。…表向きは｣

阿部｢研究所の跡地で見つけた資料には、｢人類機械化プロジェクト｣ってものが混じってた。被験者の名前は黒く塗り潰されていたけど、これってもしかして｢S-08｣？｣
向井｢…｣
阿部｢沈黙は肯定とみなすよ｣
向井｢…｣
阿部｢合ってるんだね？｣
向井は何も言わない。言わぬまま、その短剣をゆるゆる、と下ろした。

阿部｢…さくまの首筋の紋様は、S-って文字とU字型の記号と、斜めに切れた半円。こんな形をしてるのは｢06｣か｢08｣だって思ってた。でも06は康二なんだよね？｣
向井｢…｣
阿部｢教えて。…｢S-08｣とさくまは、同一人物？｣
向井｢……あべちゃんは、他人になっても賢いんやな｣
その答えが、阿部の仮説を肯定していた。

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