【夜風】3‐1 ページ44
※キャラ崩壊
※捏造過多
―海を、眺めていた。
ただひたすらに。
頬を掠める風が冷たいなんて思っていると、横に立っている男は黙って私の腰を抱き寄せる。こうしていれば暖かいだろうと、その視線が語っていた。相変わらず無口な彼だ。その厚い胸板に、遠慮無しに寄りかかってフェンスに乗せられた彼の手と、自身の手を重ねた。
「……あの灯りって、船? 」
「そうだな。…おそらく、海上保安庁のものだろう。」
「あー、そっ、か。」
H歴。女性が政権を握ったこの世の中で、同時に軍も解体された。理鶯の居た海軍だって例外ではない。けれど、必要最小限の軍備として、治安維持が目的の組織だけは残されているらしい。最も、その多くは女性で構成されているのが現状だが。
遠目に見える赤い光もきっと、そう。理鶯にとってはなんとも言いがたい光。チャリ、と彼の首にかけているタグが、小さく音を立てた。
「…小官の話を、聞いてくれるか。」
「…どうしたの? 」
彼の目は、海に向けられている。波は穏やかで、海に反射している月が、ゆら、と揺れた。
「……いずれ、軍が、復活した時。…小官は、左馬刻と銃兎を裏切る事になるのだろうか。」
「…。」
「再び、仲間と船に乗れるというのなら、小官は何としてでもすぐにその場に駆けつけるだろう。…だがその時、左馬刻や銃兎にとって、小官は裏切者になるのだろうか。」
ゆっくりと、雲が動いて月の光を隠す。一際強い、冷たい風が体に叩きつけた。
「彼等に、簡単に見放されて良いと言い切れる自分ではもう、無いんだ。…左馬刻の言葉が、どうも心に刺さって離れない…。」
「…俺達に、裏切りは無しだ…。」
思わず、気づいてしまう。理鶯がチームを捨て、軍に戻ることも。例えば、入間さんが国の人間として政府に寝返ることも。確実に、無いとは言い切れないことだらけなのだ。
どこか強く結び付いている気がして。けれどどこか、簡単に綻んでしまいそうなチーム。それこそが、MAD TRIGGER CREWの姿だったのかと思う。きっと碧棺さんは、それに気づいていて、それでも尚、このチームがはぐれないようにその言葉を掛け続けている。
俺達に裏切りは無しだ。
涙が出そうだった。理鶯の複雑な思いも。入間さんの計り知れない重圧も計画も。碧棺さんの、繰り返したくない苦い過去も…。
戦慄する、とはこの事を言うのだろうか。背中にぞわりとした寒気が走って、背筋が思わず伸びる。各々の思いが交錯して、胸が苦しくなった。
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浮遊物(プロフ) - もう好き・・・。ほんと大好き・・。私は銃兎さん推しですが左馬刻様も理鶯さんもイケメンすぎて・・・。素敵な作品をありがとうございます!! (2019年5月26日 17時) (レス) id: 7f34580b08 (このIDを非表示/違反報告)
かなね(プロフ) - 【泣かせた】の話で1人でめちゃくちゃ大号泣しながら見てました...MTCめちゃくちゃ好きですこんな短編集探してましたああああこれからも応援してます!! (2019年3月14日 23時) (レス) id: 3b0055c1f9 (このIDを非表示/違反報告)
Lon(プロフ) - ふぃ。さん» ありがとうございます!捏造だらけだけど頑張って考えたのでそういっていただけてほんとに嬉しいです…!続編も是非よろしくお願いしますm(。_。)m (2019年1月3日 20時) (レス) id: eb52dfdf9a (このIDを非表示/違反報告)
ふぃ。 - 【夜風】の話が……泣い……泣いてはないけど泣きそうになったというかマットリィィィィってなる話でした…。もう……好き。 (2019年1月3日 20時) (レス) id: 5ce2005ee9 (このIDを非表示/違反報告)
Lon(プロフ) - 蒼さん» えええ嬉しいです!!!理鶯推し中々出会えないので同担さんとても嬉しい(*´∀`)そうですよね!今度こそ勝つのはハマです! (2018年12月20日 21時) (レス) id: eb52dfdf9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lon | 作成日時:2018年11月11日 21時